2024年04月25日 (木)

Expatがやってきた

Expatとは、海外拠点(本支店、現地法人など)から日本拠点に派遣され、
日本で採用された社員(Local)とは異なるステータスを持つ社員のことです。

Expatの最大の特色は、本給が海外拠点から支払われ、日本拠点からは支払われないケースが多いことです。
Expatを日本拠点で受け入れた場合の給与計算、社会保険・労働保険、その他の手続きにつき、
留意点を纏めてみたいと思います。

給与計算

所得税法上、
「日本国籍を有しておらず、かつ過去10年以内に国内に住所または居所を有していた期間の合計が5年以内であった居住者」は、
非永住者」とされ、特殊な課税関係となります。
日本国内で勤務した分の給与は、支払いが国内でも海外でも給与課税されますが、
海外で勤務した分の給与は、海外で支払われ日本国内に送金されなければ、非課税となります。

逆に、日本滞在が5年を超えると、海外で勤務した分の給与や海外の不動産所得や金融所得も、
全て日本で課税されてしまいますので、その前に本国に帰任するExpatは多いです。

また、Expatは、一定の要件を満たした場合、会社が負担した社宅費、ホームリーブ費用、教育費が給与課税されません。
当該社員が受ける経済的利益に比べて、税務面でかなり優遇されることがあり得ます。
もっとも最近では、例えば会社がインターナショナルスクールに学費などを直接支払うのではなく、
一旦本人に課税される給与として渡し、自分で学費を支払う形にしているケースが多いようです。

社会保険・労働保険

①社会保険
一般論として、日本で本給が支払われていなければ、社会保険に加入する必要はないと解釈されています。
ただ、健康保険組合と年金事務所では、出向/転籍の別、指揮命令系統などにより、
判断が異なる場合もあるようなので、赴任時に確認しておくべきでしょう。

②労働保険
厚生労働省「雇用保険事務手続きの手引き 令和5年版」によれば、
「外国公務員および外国の失業補償制度の適用を受けていることが立証できる者は、被保険者にならない」
と明記されています。
殆どのExpatは、本国で失業補償制度の適用を受けていますので、日本で雇用保険には加入しないことが多いです。

一方、労災保険は、事業所を単位として成立しますので、日本で本給が支払われていなくても、
日本の事業主の指揮命令を受けているなら、労災保険は適用されると解されています。

その他の手続き

前項の②で見たように、Expatは雇用保険加入対象でないケースが多いですが、
その場合でも、日本の事業所での使用従属性が認められる場合には、
会社は「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」をハローワークに提出する必要があります。
これは法定の義務であり、怠ると30万円以下の罰金に処せられる可能性があります(労働施策総合推進法第28条・第40条)。

現在では、出入国在留管理庁(入管)と厚労省との間で情報共有が進んでいます。
特定の会社での就労を前提とした在留資格を保有した外国人が入国した場合、
その情報はハローワークにも共有されますので、ハローワークから会社に問い合わせが入ることもあります。

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≪2024年4月1日発行 マロニエ通信 Vol.254より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie