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海外赴任者の帯同配偶者の就労について以前は、
海外赴任者は日本人の男性総合職の方で、帯同配偶者は専業主婦、
夫の仕事と子女の子育てを現地の家庭で支える、という形が一般的で、
会社の海外赴任規程も、それを前提として作成されていました。
しかし最近では、女性の社会進出が進み、
また日本の給与水準だと現地生活コストをカバーできない例が増えたことからも、
帯同配偶者が現地で就労することを希望するケースが増えています。
これに対して、大手税理士法人が令和5年秋に行ったアンケートによれば、
サポートも含めて積極的に認めている会社はごく僅か、
約20%の会社は就労を認めておらず、約60%の会社は消極的に認めている、との結果でした。
会社としては、
①現地での配偶者ビザから就労ビザへの切り替え
②現地での所得税増加に伴う会社負担分の調整
③配偶者が現地で働くことによる安全管理の難易度
④配偶者の就労による赴任者の異動タイミングのずれの可能性
などの懸念がある一方、
上記のような背景から、無碍に断ることはできないとして、消極的に認めていると思われます。
そして、これを認めるとなった際、帯同配偶者が働く形は、数多くあります。
確認できるパターンだけでも、
A)現地法人との雇用契約
B)日本の会社との雇用契約(日本からの海外赴任)
C)日本の会社との業務委託契約
D)日本の会社と雇用契約だが、現地でのリモートワーク
があり、
それぞれのパターンにおいて、
帯同配偶者の会社が赴任者の会社と同系列の場合と無関係の場合とがありますので、
それだけで8パターンが存在することになります。
それぞれのパターンにおいて、
考慮すべきビザ・給与計算・社会保険の論点が変わってきますので、
人事部門にとっては悩ましい事態です。
しかし、令和の時代となって、昭和の時代の価値観や会社の規則を、
社員に押し付け続けることは困難と思われます。
認めざるを得ない状況が想定されるなら、会社としては、
希望者が出てきた時の、会社として望ましい就労の形や処遇について、
海外赴任規程を見直し、あるいはガイドラインを策定しておくことが望ましいでしょう。
規程の見直し、またはガイドライン策定においては、以下の4つのポイントの検討が重要となります。
Ⅰ)会社のポリシー(優先順位)の確認
Ⅱ)他社事例の調査
Ⅲ)ビザ・給与計算・社会保険の扱いの確認
Ⅳ)運用時の手間・コストの確認
です。
また、例えば、現在特に増えている、日本の会社との雇用契約かつリモートワークという選択肢であれば、
以前取り上げたように、給与計算と社会保険上の留意点だけでも、色々考えられます。
人事部門にとっては、頭の痛い事態とも言えますが、
少しでも負担を減らすため、早めに専門家にご相談いただくのが良いかと存じます。
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≪2024年7月1日発行 マロニエ通信 Vol.257より≫
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