2024年04月18日 (木)

「内定」の法的性質と留意点

前回のブログでは、入社後の「試用期間」を正しく運用するための留意点について解説いたしましたが、
入社前の「内定」の場合はどうでしょうか。

内定の法的性質や留意点について解説いたします。

内定の法的性質

企業の求人募集への応募(労働契約の申込み)に対しての内定通知は、
当該労働契約申込みに対する承諾であり、
企業と求職者の両者の合意をもって「始期付解約権留保付労働契約」が成立します。
始期付」とあるのは、内定通知から実際に入社し就労するまでは一定の期間があるためです。
解約権留保付」とは試用期間中と同様に、
法律上は、労働契約の解約権を留保している状態と解釈されます。

内々定と内定の違い

内々定は内定以前の状態を指し、内定とは異なり労働契約は成立していません。
時系列を図示すると以下の通りとなります。

内定取り消し・内々定取り消し

内定期間中も労働契約(始期付解約権留保付労働契約)が成立していることから、
内定取り消しは解雇に相当します。
そのため、労働契約法第16条(前回のブログ『試用期間中の解雇・本採用拒否』参照)が適用され、
内定取り消しは下記の2点を満たさないと認められません。

①客観的で合理的な理由があること
②社会通念上相当として是認できる場合であること
(例)学校を卒業できない場合、健康状態が悪い場合など

企業の採用担当者は、内定取り消しが解雇に相当することを理解した上で、
採用選考の段階で従業員としての適格性を判断することが求められます。
採用選考を開始する前に採用基準を具体的に明確化し、採用担当者間で共有することが重要です。

また、内々定は労働契約未成立の状態ですが、
確実に入社できると期待させる言動などがある場合には一定の期待権が認められ、
内々定取り消しはその期待権を侵害したという不法行為(民法第709条)として
損害賠償請求に発展した事例もあります。
他社への就職活動を辞退させるなど、内々定者の期待を過度に高める言動を行わないようご留意ください。

…..*…..*…..*…..*…..*…..*…..*…..*…..*….*…..*……*…..*…..*…..*…..*…..*…..*
≪2024年4月1日発行 マロニエ通信 Vol.254より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie