2024年03月28日 (木)

「アメリカ労働法事情とギグワーカー」

最近、旧知のカリフォルニア(CA)州在住の弁護士とお話しする機会がありました。
労働法関係で、日本と違うところも、共通した傾向が見えるところもあり、
興味深かったので共有させていただきます。

連邦国家である米国では、州政府の権限が大きく、労働法関係も例外ではありません。
例えば、2024年1月1日から、CA州の最低賃金は時給16ドル(約2,300円)となりました。
(連邦政府の設定する最低賃金は、7.25ドルのまま)
リモートワークに関して、CA州では、2024年1月以降、
雇用者が従業員に対面での就業場所に戻ることを要求する場合には、30日間の事前通知が必要になりました。

最も大きな話題は、ギグワーカーをめぐる労働法環境についてでした。
ギグワーカーとは、インターネット上のプラットフォームを通して、単発の仕事を請け負う人を指します。

CA州では、2020年1月にAB-5法(「ギグ法」)が施行され、個人請負の定義を厳格化し、
これに当てはまらない労働者を労働法による保護の対象としました。
これにより、最低賃金や有給病気休暇、労災保険などの対象となるギグワーカーが激増することになりました。

ここで、大手ライドシェア企業であるウーバー社などは、会社が立ち行かないとして、
ドライバーには「ギグ法」を適用せず、個人請負の地位を維持して、
別の立法で保護措置を講じるとする住民投票(Proposition 22)を同年11月に提案しました。
同社らによる2億ドル超の資金提供も功を奏して、この提案は可決されました。

しかし、同提案はドライバーたちから猛反発を受け、訴訟に持ち込まれます。
2021年8月には、CA州事実審裁判所が、同提案はCA州法に違反し無効であると判決しました。
ところが、2023年3月に、同控訴裁判所がこの判決を破棄し、
ドライバーたちは会社から有給病気休暇や健康保険といった福利厚生を受ける権利はないとする一方、
組合を結成して報酬や福利厚生の引き上げを交渉することはできる、と決定しました。
この件につき、CA州最高裁判所がどのように決着させるのか、まだ係争は進行中です。

上記のごとく、州レベルでギグワーカーの法的扱いについて不明確な状態の中、
労働者の権利保護を重視するバイデン政権は、
ギグワーカーが一定条件を満たせば、従業員としてみなすという、
労働省による連邦レベルの新規則を本年1月に発表し、この3月に発効します。

米労働省によると、新規則では、企業が労働者の仕事をどの程度管理しているか、
労働者の仕事が事業にとってどの程度不可欠か、など6つの基準により、
労働者が従業員なのか独立請負業者なのかを判断する、とされています。

これに対し、例えばウーバー社は、
「柔軟な働き方で収入を得ようとするドライバーの独立性を損なう」と声明し大反対していますので、
今後訴訟に発展する可能性は十分にあります。

つまり、ギグワーカーの代表格であるライドシェア企業のドライバーたちの労働法的立場は、
州レベルでも連邦レベルでも、まだ安定していないのです。

日本でも、本年1月には、アマゾン・ジャパンの配送業務を直接受託する個人事業主のドライバーらが労働組合を結成して、
最低報酬の引き上げや労災保険の適用を求める団体交渉を申し入れましたが、
団体交渉権が認められるか、せめぎ合いが続いています。

ギグワーカーをめぐる労働法上の扱いは、当面世界的に論議の的であり続けるものと思われます。

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≪2024年3月1日発行 マロニエ通信 Vol.253より≫
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