2024年02月29日 (木)

「技能実習制度から育成就労制度へ」

弊社のお客様が雇用される外国人社員の方は、以前は外資系企業の幹部など
年収も高い高度人材の方が多かったですが、最近は技能実習生など未熟練労働者も増えてきました。
そして現在では、在留資格としての「高度専門職」が既に新設され、
さらに技能実習制度が廃止されて新しい制度が生まれる方向であることから、
外国人材の二極化が一段と進みそうです。

今回は、この新しい在留資格について、簡単に纏めたいと思います。

2年間に渡る議論を経て、令和5年11月30日に、
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の最終報告書が公表されました。

現代の奴隷制度とまで呼ばれ、国際的な批判も強かった技能実習制度を発展的に解消し、
人材の確保と育成を目的とする新制度(仮称:育成就労)を創設し、
特定技能制度については、適正化を図った上で存続することになったそうです。

「育成就労制度」の主な内容としては、以下のものが提言されています。

●基本は3年間の育成期間とし、特定技能1号の水準の人材を育成する。

●就労前に、日本語能力試験N5等の合格または相当の日本語講習の受講を求め、
 一定の日本語力を担保する。

●一番大きなポイントとして、技能実習制度においては、
 「やむを得ない事情がある場合」のみに認められていた転籍の範囲を拡大・明確化し、
 手続きを柔軟化する。
 具体的には、同一機関での就労が1年超 / 技能検定試験基礎級等および日本語能力試験 N5等の合格 /
 転籍先機関の適正性(転籍者数等) / 同一業務区分の条件をクリアすれば、
 本人の意向による転籍も認める。

●新たな制度で育成された人材の特定技能1号への移行においては、
 従来の技能検定試験3級以上または特定技能1号評価試験の合格に加え、
 日本語能力試験N4等の合格を要件とする。
 ただし、当分の間は、認定日本語教育機関等における相当の日本語講習を受講した場合も認める。

●「外国人技能実習機構」を改組し、受入れ機関に対する監督指導機能や外国人に対する支援・
 保護機能を強化すると共に、特定技能外国人への相談援助業務を行わせる。

●新たな制度においても、監理団体を活用するが、不適切な団体は排除し、
 受入れ機関からの独立性・中立性を担保する。
 具体的には、送出機関からのキックバック、供応を禁止し、
 受入れ機関と密接な関係を有する監理団体の役職員の関与の制限、
 外部者による監査を強化した上で、制度施行に伴い、新たに許可を受けるべきものとする。

上記の内容より、新しい「育成就労制度」では、転籍の自由化特定技能との一体化
日本語能力の重視監理団体の監視強化、が重点であることが見て取れます。

一方、この提案に対しては、1年超の就労で転職されてしまう可能性への不安・不満、
都市部での就労希望集中への懸念も、既に伝えられています。

この提案内容が具体化して新制度が発足するのは、令和7年4月または令和8年4月が有力と言われています。
新制度が実際どのようなものになり、日本の人手不足を有効に解決できることになるのか、注目されます。

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≪2024年2月1日発行 マロニエ通信 Vol.252より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie