2024年01月25日 (木)

「改めて、社会保障協定」

社員が日本人か外国人か、海外に赴任するか来日するかに関わらず、
税務上の居住者/非居住者の扱いと、厚生年金保険に関する社会保障協定上の取り扱いは、
常に留意が必要です。

今回は改めて注意すべき点を纏めてみたいと思います。

 

厚生年金脱退一時金と社会保障協定の選択

外国人社員が退職して本国に帰国する際などには、厚生年金脱退一時金を請求することが一般的です。
ここで一番気をつけるべき点は、脱退一時金を受給すれば、それまでの厚生年金記録が消えてしまいますので、
社会保障協定に基づく年金受給のための期間通算計算はゼロに戻ってしまうということです。

同じ会社でなくとも、再び日本で勤務する可能性があるのであれば、
現時点で脱退一時金を請求するのか、
将来的に社会保障協定上の期間通算を利用して通常の老齢年金を受給するのか、
慎重に検討する必要があります。

後々のトラブルを避けるため、どちらにするかの最終選択は、社員本人にしてもらうべきと考えます。

 

相手国により社会保障協定の内容が異なる

社会保障協定は、「年金通算協定」と別称されることもあり、年金保険に関する取決めが中心ですが、
それが全てではなく、相手国によりその内容が異なります。

例えば、米国との社会保障協定には年金保険と健康保険が含まれ、
オランダとの協定では年金保険、健康保険に加えて雇用保険も含まれています。

また、相手国によっては、年金加入期間の通算ができません

一般的には、社会保障協定の主な目的は、
年金保険料の二重払いの防止と、年金加入期間の通算による掛け捨ての防止ですが、
英国・韓国・中国との社会保障協定では、前者のみについて規定して後者は規定していないため、
加入期間通算はできないのです。
その意味で、「年金通算協定」という別称は、正確性を欠きます。

 

日本では厚生年金制度への特例加入もできる

以前は、英国との間でのみ、年金制度への二重加入特例が認められていましたが、
2012年3月より、全ての社会保障協定国に対し、厚生年金保険への特例加入が可能になりました。

すなわち、当初から赴任予定期間が5年間を超えるため、本来であれば相手国の年金制度のみに加入すべきところ、
年金事務所に「厚生年金保険特例加入被保険者資格取得届」を提出することで、
相手国の年金制度に加入しながら、日本の厚生年金制度に加入することが可能です。

厚生年金に加入すれば、企業年金への加入も可能になります。
会社の負担は増えますが、社員にとっては将来、日本の老齢年金を海外赴任期間分も受給できることになり、
福利厚生として手厚いものになります。

 

現在、社会保障協定の発効国は22ヶ国、署名済未発効の国が1ヶ国(イタリア)あります。
社員が国境を越えて異動する場合には、
日本との社会保障協定の有無およびその内容を確認することが重要です。

 

 

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≪2024年1月1日発行 マロニエ通信 Vol.251より≫
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