2023年11月30日 (木)

海外現地での課税に注意

日本から海外へ赴任者を送る場合、
問題のない処遇となる給与・手当体系とすることが一番重要ですが、
同時にそれが会社にとってどの程度のトータルコストになるかを把握しておくことも大事です。

そのコストが過大であれば、海外赴任計画自体を見直す必要も出てきます。

日本企業の殆どは、国内勤務時と同等の手取り補償を前提とし、
現地の所得税等・社会保険料は会社が負担しています。

ここで注意すべきは、
日本では非課税扱いとされるため、税額計算に入れていなかった経費や手当が、
現地では課税され、会社にとって思わぬ負担増、
ということもあり得ることです。

例えば、日本では「社宅優遇課税制度」があり、
一定の条件の下で、会社からの住宅提供による経済的利益が非課税となります。
また年1回の会社負担によるホームリーブは、給与課税しないという原則があります。

しかし、海外では、これらの経済的利益は課税対象となる国が大半です。

また、赴任時の引越費用の会社負担分を給与課税する国(米国)や、
日本の社会保険料の会社負担分を課税する国(中国)もあります。

後者では、中国への赴任者の多い会社では、それなりの金額の会社負担増となりますので、
これを予期していなかった会社が、赴任人数、
ひいては中国におけるオペレーションを見直したという例もあるそうです。

さらに、これは中国での法人税に関してですが、驚くようなケースがありました。

日本の医薬品会社A社の中国子会社であるB社の話ですが、
B社はA社から商品を仕入れて、中国国内で販売しています。
B社の売上総利益率は50%前後と高いのですが、
自社内に営業やマーケティング機能を持たないため、これらを外部委託しており、
販売促進コストが嵩んで、税引前利益率は2%台となることが多かったのです。
B社は利益率が業界平均を大きく下回っていると、不正の嫌疑がかかり、
中国当局による税務調査が実施されました。

税務当局は、保有するデータベースより、類似企業の平均利益率を算出し、
業界平均値である約20%の税引前利益率を前提とした納税をすべきと主張しました。

これに対しB社は、ビジネスモデルの説明や、
販売促進に関する費用は第三者への適正な支払いである証明を提出しました。
最終的には、B社は、当局から、業界平均より薄利多売のビジネスモデルであることへの理解は得ましたが、
税引前利益率5%を前提とする追加納税をすることで決着したそうです。

先進国の基準で考えれば、この5%に根拠はなく、
適正な費用計上であれば、2%の税引前利益率でも問題ないはずですが、
これ以上の税務当局との関係悪化を恐れたB社の経営陣が、5%で決着することを選んだ、とのことでした。

以前から、中国やインドなど、市場の大きな途上国においては、
日本からの赴任者は、現地の税法に不案内で、税務調査対応にも慣れていないため、
追徴課税を言われるがままに支払ってしまうことから、
日系企業は格好のターゲットになっているケースが多いと指摘されています。

対応が難しい分野ですが、赴任者が現地で適切な専門的アドバイスを得られるよう、
サポート体制を構築することが重要です。

 

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≪2023年11月1日発行 マロニエ通信 Vol.249より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie