2023年07月27日 (木)

シン・外国人雇用の管理

「技能実習制度廃止」という言葉がメディアで大きく躍っていますが、
日本企業には、どのような影響を及ぼすのでしょうか。

先日、政府の「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が中間報告書を発表し、
この秋の最終報告書提出を目指して、議論が続いています。

中間報告書では、技能実習制度について、
トラブルの主原因であった「転籍制限」を緩めること、
実習生が「特定技能」へ円滑に移行できるようにすること、
「監理団体」の要件を厳格化すること、
などが記述されています。

最も重要なポイントは、「国際貢献」というこれまでの建前を捨て、
正面から「労働力の育成と供給」を目的とした新制度を創設して、
現行の技能実習制度を廃止すると明言したことでしょう。
海外から人身売買という非難すら受けていた制度ですので、
先ず廃止を宣言したことは、政治的な意味合いが大きかったと思われます。

一方、当初より人手不足解消の手段として創設された「特定技能制度」については、
技能実習制度の多岐にわたる職種や分野に合わせるなどして、
新制度と一体的な運用がなされることを求めています。

全体像の明細は、最終報告書を待つ必要がありますが、
近い将来、こうした低中位技能外国人が労働市場に多数参入することは明らかです。

また、日本政府は、外国人雇用に関し、
コンプライアンス遵守を一層強く企業に求め始めています。
例えば、最近になって、ハローワークへの「外国人雇用状況届出書」は、
電子申請が可能となりました。

すなわち、雇用保険被保険者となる外国人の雇入れの場合は、
「雇用保険被保険者資格取得届(様式2号)」をe-Gov から、
雇用保険被保険者とならない外国人の場合は、
「外国人雇用状況届出書(様式3号)」を外国人雇用状況届出システムから、
それぞれ電子申請することができるようになりました。

これは、政府の進める行政のDX 化の動きに沿った変更点の一つに過ぎませんが、
外国人雇用の管理という視点からは、それなりに大きな意味があります。

以前は、入管(法務省)とハローワーク(厚労省)の間では、
特定の外国人に関する情報は共有されていませんでした。
しかし現在では、情報が共有されるようになり、
さらにオンラインで繋ぐことが可能となっております。

よって、例えば、特定企業で就労可能な在留資格を持った外国人に関し、
ハローワークに雇入れの届出が出ていない、
あるいは逆に、ハローワークに雇入れの届出が提出されているのに、
就労できる在留資格を保有していないといった事実が、瞬時に発見できることになります。

会社が、外国人雇用状況届出書を提出しなかった場合は、
30万円以下の罰金(労働施策総合推進法第40条)、
適切な在留資格を保有しない外国人を就労させた場合は、
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金(併科あり、入管法第73条の2)
を課せられる可能性があります。

弊社でも、これまでの技能実習制度の下で、
実習生用の特別な就業規則の作成を依頼いただいて作成した経験はありますが、
今後新しい制度が設立されれば、新たなご要望に対応できるようにしなければなりません。
不断の努力を続けて、お客様のニーズにお応えして参る所存です。

 

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≪2023年7月1日発行 マロニエ通信 Vol.245より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie