2023年06月29日 (木)

米国におけるリモートワークの現状

日本でも仕事のスタイルとして定着してきたリモートワークですが、
その先進国といえる米国での現状につき、日本のリクルート社(R社)と米シンクタンクGWA社が、
興味深いレポートを発表していますので、共有いたします。

米国でリモートワークが始まったのは、インターネットサービスが出現した1980年代で、
世界で初めてリモートワークを採用した雇用主はNASA(アメリカ航空宇宙局)だと言われています。

その後テクノロジーが進化し、更には新型コロナウィルスの感染拡大を受けて
多くの州で外出禁止令が敷かれ、リモートワーク導入企業が一気に増加しました。

R社レポートによると、米国の賃金労働者約1億4400万人のうち、1/4にあたる約3600 万人が、
「リモートワークをしたことがある」と回答したそうです(米国労働者統計局調査、2018年)。

その属性に着目すると、人種ではアジア系の約32%がトップで、
白人系は約26%、アフリカ系は約18%が、リモートワーク経験があるとのことです。

また、学歴では、4年制大学卒以上の労働者がリモートワークした割合は約47%と高く、
逆に高校卒労働者の経験割合は約18%に止まるとのことでした。

職種では、管理・ビジネス・金融関連のリモートワーク経験が約51%と最も高く、
専門職が約38%、営業職が約25%と続きます。

一方、GWA社は、リモートワークの効果と限界に関する調査を行っています。

同社の推計によれば、リモートワークを希望する全ての労働者が、勤務時間の半分をリモートワークにすれば、
全米で企業はオフィス家賃など年間6,890億ドル(約93兆円)の節約が可能としています。
また、労働者は、年間11労働日に相当する通勤時間を削減できるとしています。

しかし、もちろん、リモートワークも良い点ばかりではありません。
このレポートでは、リモートワークにより、社員間のコミュニケーションが不足する、
会社側からは労働時間を管理するのは難しい、などの難点が挙げられています。

また、そもそもリモートワークの導入自体が困難な業種が存在するとし、
宿泊・飲食サービス業、農林水産業では、リモートで可能な仕事は10%もないと指摘しています。

また、R社レポートでは、リモートワーク先進企業として、
Zapier社とGitLab社という、共にカリフォルニア州を本拠とするIT企業が取り上げられています。

特にGitLab社は、世界67ヶ国に1,200人の社員を抱えますが、
本社オフィスを持たず、全社員がフルリモートで働いています。
そしてその経営ノウハウをWEB上で公開しており、リモートマネジメントのポイント、
成果評価の留意点、チーム活性化の方法などの有用な情報が満載されています。

近年では、米国を含む海外からのリモートワークが増えてきています。
各国および日本における労働法制・税法・社会保険制度が絡みますので、
一筋縄では問題解決とはいきません。

ただ、問題を抱えながらも、この方向性が逆戻りすることはないでしょう。

 

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≪2023年6月1日発行 マロニエ通信 Vol.244より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie