2023年03月16日 (木)

「雇止め」について

業績悪化による事業規模の縮小や従業員の能力不足によるミスマッチ等により、
有期契約労働者の雇止めを検討される企業があります。
雇止めそのものは違法ではありませんが、
運用方法によっては雇止めが無効とされる場合があるため、注意が必要です。

そこで、今回は雇止めについて解説いたします。

雇止めとは

雇止めとは、有期の雇用契約を締結している労働者に対し、
雇用契約期間満了時に契約更新をせず契約を終了することです。

原則として、契約期間が満了した時点で雇用契約を終了することは問題ありません。
ただし、一定期間雇用を継続したにも関わらず、契約を更新されないこととなれば、
労働者は生活を維持できなくなる恐れがあります。

そこで、労働者保護の観点から、過去の最高裁判例により一定の場合に雇止めを無効とする
判例上のルール「雇止め法理」が確立されています。

 

雇止めの有効/無効に関する判断基準

雇止め法理」とは、雇止めに一定の制限をかける考え方をいい、
雇止めの有効/無効を判断するための基準とされています。

具体的には、下図の①または②のいずれかに該当する場合に、使用者の行う雇止めが、
「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」
は、当該雇止めが認められないという考え方です。

この考え方に基づいて雇止めが無効となった場合、
従前と同一の労働条件で、有期労働契約が更新されます。

 

雇止めが有効と認められるためには

雇止めの有効/無効の判断は、あらゆる事情が総合的に勘案されるため、
明確な線引きはありません。
しかし、一般的に有効となるための判断基準は、以下3点であると言われています。

●契約更新回数や雇用期間が明示されていること
契約更新回数や雇用期間の上限が明示されている場合、
労働者がそれ以上の契約更新を期待することはないでしょう。
雇用契約書や就業規則に明記されている場合、
雇止めが有効とされる可能性が高くなります。

●雇用期間の管理が徹底されていること
使用者が、有期契約労働者の雇用期間を適切に把握しており、
契約更新時に合意書や契約書を交わしている場合には、
雇止めが有効とされる可能性が高いと言えます。

●業務内容が限定されていること
雇用契約を締結する時点で業務内容を限定し、
無期契約労働者(正社員)との差異を明確化している場合は、
雇止めが有効とされる可能性が高いと言えます。

 

雇止めせざるを得ないケースはしばしば生じますが、
労使間でトラブルになった場合に雇止めが無効であると判断されないためには、
押さえるべきポイントを理解したうえで運用することが重要です。

 

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≪2023年3月1日発行 マロニエ通信 Vol.241より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie