2022年12月22日 (木)

日本の賃金と休暇

先日、日本農業新聞に、興味深い記事が掲載されていました。

令和3年12月時点で、技能実習生(約28万人)のうち圧倒的に多いのはベトナム人(約16万人)ですが、
日本離れ」が進みつつある、というのです。

コロナ禍に伴う入国水際対策や日本国内の雇用停滞によって、
賃金を含む待遇が日本と同等以上という国が増え、ベトナム人にとって選択肢が増えています。

そのうえ、直近の円安で、母国に送金できる賃金額が大きく目減りしています。

ベトナムドンに対し、日本円は年初と比べて20%程度安くなっていますが、
一方ベトナムの平均賃金は前年同月比6%程度上昇し続けており、日本との格差が急速に縮小しています。

最近、特に農業分野において話題になっているのが、
今春ベトナム・オーストラリア間で締結された農業労働者の派遣・受入れ協定で、
本年9月から募集が始まっています。

ベトナム系メディアによれば、
月給は3,200~4,000豪ドル(約30万~38万円)とのことで、
ベトナムの平均月収の10倍近く、日本の技能実習生の平均月収のほぼ倍のイメージです。

この協定では、賃金の高さが目を惹きますが、休暇付与も段違いです。

9ヶ月間働き、3ヶ月間は自由行動というもので、
家族との結びつきの強いベトナム人に強力にアピールする内容になっています。

オーストラリアではこれだけの賃金と休暇、更に学ぶのは汎用性がある英語という条件がありながら、
外国人が日本に労働者として来てくれるインセンティブがあるのでしょうか。
特に賃金については、日本企業の生産性を劇的に向上させないと、
高度人材外国人はおろか、低技能人材も確保するのは難しくなっていく兆しがあります。

低技能でない労働者の長期休暇についても、世界では注目すべき動きがあります。

日本では、例えば本年10月からの育児・介護休業法の改正適用により、
以前よりは休暇が取りやすい環境になりつつあります。

一方、例えばベルギーでは、先進的な長期休暇制度を導入し、注目を浴びています。

職業キャリアの中断制度として、
欧州で最初にベルギーが「キャリアブレイク制度(CB)」を導入し(1983年)、
その後「タイムクレジット制度(TC)」として再編されました(2002 年)。

これは出産・育児や介護に関する休業制度とは別に法定化されたもので、
学校教育や職業訓練など、取得の理由を問われず、
国からの給付金も支払われるところに大きな特徴があります。

コンセプトとして、子育てをするか否か、
また、若年・壮年・老年というタイミングに関わらず、
仕事と学校教育と引退の時間の割り振りを、自分の意思で決められるというものです。

日本は世界の潮流を注視しながら、
賃金水準も休暇制度も、改善し続ける必要がありそうです。

 

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≪2022年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.238より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie