2023年01月12日 (木)

時間外労働の割増賃金率の引き上げの対応実務

令和5年4月1日より、中小企業に対する
「月の時間外労働60時間超に対し50%以上の割増賃金の支払い義務」
の猶予措置が廃止され、割増賃金率が引き上げられます。

改正前に際して実務的対応を確認しておきましょう。

改正のポイント

月60時間超の時間外労働に対し、50%以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。

 

割増賃金の具体的な算出方法

🔵月60時間超の法定時間外労働時間の集計と割増賃金率の確認

まずは法定休日以外の法定時間外労働を集計し、60時間超えが何時間あるか確認します。

上記の通り時間外労働を行った場合、60時間超の集計と割増率は次のようになります。

 

🔵割増賃金の計算

①60時間以下の時間外労働に対する賃金1,600円×55時間×1.25=110,000円
②60時間以下の時間外の内、深夜労働に対する賃金1,600円×5時間×1.50=12,000円
③60時間超の時間外労働に対する賃金1,600円×5時間×1.50=12,000円
④60時間超の時間外労働の内、深夜労働に対する賃金1,600円×1時間×1.75=2,800円
⑤休日労働に対する賃金1,600円×9時間×1.35=19,440円

 

代替休暇制度導入の検討

月60時間を超える時間外労働を行った労働者の健康を守るという観点から、
労使協定を結んだ場合、
引き上げ分の割増賃金支払いに代えて代替休暇を付与することも可能です。

制度を導入した場合には
月60時間超の時間外労働に対する引き上げ分の割増賃金に対応する代替休暇時間を算定し、
個々の労働者の代替休暇取得実績を一定期間で管理する必要があります。

 

割増賃金率引き上げに伴い、割増賃金計算の変更はもとより労働環境の整備も重要です。
就業規則の変更に加え、長時間労働の是正によって労働者が健康的に働ける環境づくりに取り組むことが
結果として企業のコスト削減にもつながります。

 

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≪2023年1月1日発行 マロニエ通信 Vol.239より≫
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