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先日、厚生労働省より来年4月より、労働者の個別の同意を得るなど一定の条件を満たせば、
給与を現金ではない、デジタルマネーで支払うことを認めるという方向性が示されました。
これは労働基準法で定められている「賃金支払いの5原則」の例外にあたるものであり、
大きな転換点ともいえます。
そこで今回は、「賃金支払いの5原則」を振り返りつつ、
今回の改正のポイントや運用上の注意事項について解説します。
賃金支払いの5 原則
労働基準法第24条では、労働者への賃金の支払い方法が定められており、
これを一般的に「賃金支払いの5原則」と呼んでいます。
デジタル給与の解禁とは
🔵 概要
これまで通貨払いの原則の例外として
労働者が同意すれば銀行口座への振り込みを認めていたことに加え、
資金移動業者いわゆるPayPay や LINEPay のような、
銀行以外の送金サービスへ直接給与の振込が認められます。
なお、今回の改正では仮想通貨やポイントでの支払いなど、
現金化できない手段での支払いは引き続き認められません。
🔵 資金移動業者の参入要件
資金移動業者のうち、厚労省の参入審査に合格した事業者のみが対象になり、
弱い立場にある労働者に不利益がないよう次のような要件が課せられています。
・破産時や不正引き出しなどで生じた損失について全額補償制度の準備
・厚労省に財務状況を報告できる体制の構築
🔵 労使間導入のメリット
労働者側:給与振込先選択肢の増加、海外送金時の手数料減の可能性
事業主側:振込手数料減の可能性
運用上の注意事項
会社として、デジタル給与導入に際して運用上の注意点は大きく3つあります。
①対象となる労働者の範囲や業者について労使協定を結ぶこと
②デジタル払いを行う労働者と個別に同意を得ること
③振込先の残高の上限は100万円でなければならない。
実際にデジタル払いを導入した際に、
協定の締結や労働者との個別での同意といった事前準備はもちろんのこと、
振込先の残高が100万円以内であることなどの毎月注意しなければならない事項もあり、
実際にどのくらいの企業で導入が進むのか疑問が残ります。
しかし、現金手渡しから口座振り込みが当たり前になったように、
今回の改正が新たな常識の始まりである可能性は大いにありえます。
*本記事は、10月末時点での情報をもとに執筆したものである。
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≪2022年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.238より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie