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コロナ禍で制限されていた国境を越える人材の移動も、徐々に緩和されてきました。
その一つが外国人技能実習生で、新たな入国や雇用に関するお問い合わせも増えています。
一方で、技能実習生の雇用には、労務管理上留意すべきいくつかのポイントがあります。
Ⅰ.在留資格について
技能実習生の対象となる職種・作業は、法令により限定列挙されており、
どんな職種でも、という訳ではありません。
例えば、業界からの要望も強いコンビニエンスストアの店員は、未だ対象となっていません。
一方で、グレーな領域もあると言われ、
「腕のいい」監理団体が、入管に対して強引に説明して通してしまう事例もあるようですが、
その後入管に摘発された大手企業の事件報道等を見ますと、無理のある採用を行うべきではないと考えます。
Ⅱ.社会保険について
技能実習生制度は、日本で得た技能・知識を母国に持ち帰ってもらうことが目的ですが、
実習生自身には、日本滞在中に少しでも多く稼ぎたい、という意識があることも確かです。
このため、給与から社会保険料が引かれて、手取り金額が減ってしまうことを嫌う実習生も多いですが、
社会保険加入は任意ではなく法的義務であること、
加入してはじめて給付メリットが得られることを説明して、納得してもらう必要があります。
そして、外国人特有に適用される制度として、厚生年金の脱退一時金があります。
技能実習生にとっては大きな金額となりますので、制度の存在を認知してもらうと同時に、
実際の手続きは企業または監理団体が協力すべき事項となります。
Ⅲ. 給与計算について
来日 2 年目以降の技能実習生は、居住者としての扱いとなり、
所得税は通常の源泉徴収税額表に基づく毎月の源泉徴収および年末調整の対象となりますが、
1 年目の技能実習生(1 号実習生)については、注意が必要です。
雇用契約が 1 年毎となっており、試験に合格できなければ 2 号実習生に移行できずに 1 年未満で帰国する者は、
非居住者として20.42% の源泉徴収の対象、と税務署は指導しているようです。
Ⅳ.労務管理について
時には「現代の奴隷制度」とまで呼ばれることのある技能実習生制度ですが、
法令上は、手厚く保護されています。
以前は労働者としての地位が曖昧でしたが、今では明確に労働者として位置付けられ、
日本人と同じ労働法の保護を受けられます。
さらに、国際的な批判に対応して、技能実習法の施行(2017 年)により、
プラスアルファの保護も与えられるようになりました。
例えば、事業附属寄宿舎規程によれば、一人当たりの寝室の広さは 2.5㎡以上とされていますが、
技能実習法施行規則では、4.5㎡以上が要求されています。
以上の例からも読み取れますように、技能実習生の雇用は、
一般の従業員とは異なる手間とコストがかかることを認識しておくべきです。
技能実習生制度は、監理団体に頼る部分が大きいですが、
実習実施者である各企業が雇用主としての責任を負います。
技能実習生は、単なる賃金の安い労働者ではなく、こうした留意点があることを
十分承知したうえで人材活用すべきものと言えるでしょう。
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≪2022年8月1日発行 マロニエ通信 Vol.234より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie