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最近、お客様からのご相談内容を振り返ると、
海外勤務者をめぐる税務が、より複雑化していることを実感しております。
そしてそれは、所得税に関することだけでなく、法人税にも広がっています。
Ⅰ.海外赴任者が日本に一時帰国して日本で赴任先の仕事を行う場合
コロナ禍が長期に渡っており、こうしたケースが増えてきました。
この場合、給与を日本で支払うのであれば、「非居住者」に対する国内源泉所得として、
20.42%の源泉徴収を行って翌月10日まで納付することが原則となります。
なお、日本滞在が一年を超えてしまえば、
税法上「居住者」となりますので、通常の甲欄源泉の対象となります。
海外払い給与がある場合は、租税条約との関係でより複雑となります。
日本国内の滞在が183日以内などの要件を満たせば、短期滞在者免税の対象となりますが、
満たさない場合は、国内源泉所得に対して所謂172条準確定申告
(税率20.42%、申告納付期限は出国日)が必要となります。
Ⅱ.海外赴任者の人件費を日本の本社が負担する場合の課税問題
本来、海外赴任者は海外赴任先の便益に貢献すべき者ですから、
その人件費を日本の本社が負担すれば、海外子会社等への寄附金として、
法人税の計算上損金不算入となります。
例外として、法人税基本通達9-2-47により、
赴任先法人の給与との較差補填のため支給されるものならば損金算入できることになっていますが、
近年では、日本の国税当局は、厳密に「較差補填かどうか」を
チェックしてくる傾向があるとのことですので、留意すべきです。
また、海外「出張者」が、海外子会社に対して便益を提供するのであれば、
日本の本社が適正な対価を海外子会社に請求しなければ、
国外関連者への寄附金とされて、損金算入が否認されます(措置法66の4③)。
Ⅲ.役務提供PEを巡る問題
この問題は近年特に大きな話題を集めています。
PE(恒久的施設)とは、外国企業が事業を行う一定の場所(支店等)を意味し、
これがあれば現地の法人税が課され、なければ課税されない、
というのが国際課税の大原則になります。
ところが、長期間(累計6ヶ月等)の役務提供があると、
物理的構築物はなくとも、役務提供自体が日本の本社のPEとみなされ、
現地法人税が課される場合があります(例:日中租税条約5条5項)。
以前は中国がその典型でしたが、最近ではインドが最も厳しいと聞きます。
このリスクを低減するためには、海外赴任者の税務上の「実質的雇用者」が、
日本の本社でなく海外赴任先となるよう、対策を講じておく必要があります。
具体的には、業務の指揮監督、業績評価等につき、出向契約書等の書類を整えておくことです。
上記の点、特にⅡ・Ⅲは、法人税に関わっており、税理士からの助言も欠かせません。
あらかじめ対応方法等を確認しておく必要があるといえるでしょう。
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≪2022年6月1日発行 マロニエ通信 Vol.232より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie