2022年05月12日 (木)

人事制度策定のフロー(第2回)

前号では、人事制度の概要をご紹介いたしました。
本号では、一般的な人事制度の策定フローをご紹介いたします。

[Step1] 経営方針の確認

人事制度は、企業の目的・目標を達成するための手段となるものであるため、
経営方針に基づいて方向性を決定する必要があります。
そのため、自社の経営方針・基本理念を確認し、
従業員に対する考え方を示す「人事ポリシー」を明文化することが不可欠です。
人事ポリシーは人事制度の核となるだけでなく、
従業員に対して会社のメッセージを伝える役割も担います。

 

[Step2] 現状分析及び方針策定

現在の人事制度を分析し、制度上の課題を抽出します。
抽出した課題を解消する視点で、新たな制度の大枠をデザインしていきます。
現状分析では、従業員満足度調査や各部門へのヒアリング、
他社との給与水準の比較等を実施することが必要であり、
時間をかけて可能な限り詳細な情報まで把握することが望ましいです。

 

[Step3] 等級制度の設計

人事制度の骨格と言える等級制度を構築します。
Step2で定めた方針に基づき、キャリアコースや階段数、等級と役職の関係性といった枠組みを決定します。
その後、等級ごとに求める能力・役割をまとめた「等級基準書」「役割定義書」等を作成します。

 

[Step4] 人事評価制度の設計

等級制度で定義した等級基準等に対応する形で評価の基準を定めます。
人事評価制度の肝は、評価項目及び評価基準であると言えます。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに大きく影響するため、
会社が従業員に求める成果を明確に伝え、適正に評価できる設計とすることが肝要です。
従業員のモチベーションを高く保ち、ハイパフォーマーを増やすことを意識して構築しましょう。

 

[Step5] 報酬制度の設計

人事評価制度の結果を適正に報酬に反映するための制度とします。
限られた財源から最大限の効果を得るため、貢献度に応じた配分が求められます。
年次に関わらず成果を重視して配分することで、若手従業員のモチベーション向上や
中堅従業員の危機感の醸成にもつながります。
なお、人件費の総額は無理のない設計になっているか、シミュレーションを行うことも重要です。

 

[Step6] 移行シミュレーション

新制度が決定した後、移行した場合のシミュレーションを実施する必要があります。
総額人件費の変化、移行後の労働生産性の変化等を確認し、必要に応じて改善していきます。
また、従業員(労働組合)に対する十分な説明を行い、理解と協力を求めます。
処遇が大きく変わる従業員に対しては、一定の猶予期間を設けるなどの措置も必要です。

 

[Step7] 制度の定着化及び評価者研修

新たな人事制度を意図したとおりに機能させるためには、
従業員への周知や評価者研修を実施し、社内に浸透させることが重要です。
また、運用開始後には、評価者の評価スキルや
面談スキルが不足しているという問題が発生することが多いと言われています。
制度導入時には、研修等によって評価者のスキルアップ及び目線合わせを行い、
適正な運用ができるよう注力します。

人事制度は、策定して終わりではなく、運用こそが最も重要であると言えます。

 

人事制度を策定する際、各Stepで様々な意見が飛び交うことが想定されますが、
経営方針に基づいた制度にするという共通認識を持つことで、大きなブレはなくなります。
Step1を丁寧に行い、会社の成長に寄与する制度を設計しましょう。

 

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≪2022年5月1日発行 マロニエ通信 Vol.231より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie