2022年04月28日 (木)

お国変われば

在日外資系企業の就業規則策定で、日系企業との一番大きな違いは、英語でも作成する場合があることで、
専門用語を注意深く翻訳する必要があります。

その他には、規定内容自体もその国ならではの特徴的な点があり、
例えば米シカゴを本社とする会社の日本法人の就業規則では、定年規定がありませんでした。

米国では、年齢差別禁止法(ADEA)に基づき、
一定の年齢に達したことを理由に強制的に退職させることは、年齢による差別にあたり違法とされます。
そして、本社の人事部門から、日本法人もその方針に従うよう指示が出されたものです。
その背景には、米国独特の随意雇用原則(Employment at Will)が存在し、
会社側は差別以外のどのような理由でも従業員を解雇できる、という事情があります。

また、米国では今でも経済が成長しているので、
高齢者の雇用を促進しても若者の就労機会を奪わない、という分析もなされています。

 

 

そして、以前は外資系といえば、欧米資本で欧米流の人事制度も導入している企業を意味していましたが、
最近では、アジア資本の企業、または資本は欧米でも、日本を管轄する人事部門は日本以外のアジアに所在、
というケースも増えてきました。

ある大手米国企業の例では、日本法人を管轄する人事部門は韓国に所在し、担当マネジャーも韓国の方です。
この企業では、日本語・英語併記で就業規則を策定し、
慶弔休暇日数、慶弔一時金、花輪など、慶弔に関する規定は、見たことがないほど手厚い内容となっています。

また、別のケースではある中国系の日本法人は、多くのインドネシア人を雇用しているので、
イスラム教徒の従業員に配慮し、お祈りの時間をトイレ休憩などと同様にみなし、
労働時間から差し引かない旨を雇用契約書で明記している、とのことでした。

そして別の中国系日本法人では、カンボジア人を大量に雇用する予定があるため、
カンボジアの労働慣習につき、調べを進めているという話を伺いました。

様々な国の企業で、様々な国籍の従業員の就労があり、規定の策定も留意すべき点が増えています。
各国独自の文化、宗教などの背景を踏まえて就業規則を策定することは容易ではありませんが、
就業規則も、加速する多様化へ適応させていく必要があると言えるでしょう。

 

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≪2022年4月1日発行 マロニエ通信 Vol.230より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie