外国人海外テレワーカーの社会保険と給与計算

以前からIT 技術の発達により、社員が日本の会社に雇用されながら、
物理的には海外でテレワークするという形態はありましたが、
新型コロナ感染症の影響により、さらに増加しています。
そしてそれは、現地で採用された外国人というケースもあり得ます。
その場合の各種手続きは、日本人と共通する部分も多いですが、外国人特有の違いもあります。

【1.給与計算について】

日本の所得税は属地主義であり、国籍に関係なく、居住者/非居住者により、課税関係が決まります。
社員が海外に居住して、そこでテレワークを行っていれば、非居住者による国外源泉所得となり、
日本の会社のための仕事をしていても、給与が日本の会社から支払われていても、非課税となります。

住民税については、現地採用された外国人は日本に住所があったことがないので、
住民税が徴収されることはありません。

 

【2.各種保険について】

現地で採用された外国人であっても、以下の条件を全て満たせば、日本の社会保険に加入します。
①日本法人と雇用契約を結んでいる
②日本法人より指揮命令を受けている
③日本法人が給与を支払っている

日本居住歴のない外国人は、基礎年金番号やマイナンバーを持っていないので、
加入にあたっては、資格取得届とパスポート等公的機関が発行した本人確認書類の写しが必要となります。

 

ⅰ)健康保険
日本の健康保険の海外療養費制度を使って、海外での医療費のうち一定割合の給付を受けることが可能です。
但し、日本国内の療養費を基準に算定されるので、現地で実際に支払った金額とは割合が一致しません。

 

ⅱ)介護保険
介護保険は、日本国内に住所を有する40 歳以上65 歳未満の健康保険加入者が対象となります。
よって海外居住の外国人は対象となりませんので、管轄の年金事務所または健康保険組合に
「介護保険適用除外等該当・非該当届」を提出する必要があります。

 

ⅲ)厚生年金保険
日本の厚生年金保険に加入することが原則になりますので、現地の公的年金保険と二重加入になる可能性があります。
その国が日本と社会保障協定を締結している場合には、一定の条件の下で現地の公的年金保険加入を免除されます。
国ごとに社会保障協定の内容は異なりますので、確認が必要です。

 

ⅳ)労災保険
上述の社会保険の加入要件を満たしているのであれば、
所属する日本の事業所を管轄する労災保険の給付を受けることができます。
テレワークの場合、業務上の事故かプライベートの事故かを、個別に調査されることになります。

 

ⅴ)雇用保険
雇用保険は、日本での失業に資するためのセーフティーネットですので、
日本で働く予定がない場合は、加入対象外です。

 

海外でのテレワークに関するお問い合せは今後も増えると考えられます。
法令が現実に追いついていない部分もありますが、不断の情報収集が必要です。

 

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≪2022年2月1日発行 マロニエ通信 Vol.228より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie