2021年12月23日 (木)

円安と人事部門

本稿執筆時点では1ドル114円台で、じりじりと円安基調が続いております。
元来輸出立国であった我が国のマクロ経済には良いこととも言えますが、ミクロ的にはそうでないことも。
ガソリンや食料品など輸入財の価格は上昇しますので、
輸入に頼る企業や一般消費者の生活には、マイナスの影響もありえます。

そして、会社の人事部門は一見為替レートとは関係が薄いですが、海外駐在員との関係では影響が出てきます。

円安になると、海外駐在員の現地通貨建の給与は目減りしてしまいます。

例えば、1ドル100円であれば、1万円の給与で100ドル分の買い物ができますが、
1ドル200円になれば、同じ1万円の給与でも50ドル分の買い物しかできなくなります。

このため、円安状態が続くと海外駐在員の生活は苦しくなり、人事部門に不公平を訴えることになります。
逆に円高基調となった場合、駐在員は通常何も言ってきません。
これを放置すれば、国内勤務社員との公平を欠くことになりえます。

この円安(為替変動)リスクに対応する方法は、大きく二つあります。

一つは、先物為替予約により、将来の為替レートを確定する方法です。
輸出入を扱っている会社であれば、駐在員の現地給与分も経理で為替約定してもらうことが可能です。

もう一つのより一般的な手法は、駐在員の現地給与のための換算レートを定期的に見直し
必要な場合には補填手当を支給することです。
海外赴任規程の中で見直し条件を規定することが通常ですが、少なくとも年に1回は見直すべきでしょう。

あるいは、一定期間内(例えば6ヵ月以内)に一定比率(例えば20%)以上の
為替変動があった場合は見直す、という方法もあります。

また、為替換算レートの決め方ですが、会社のメインバンクの発表数値を使う場合が殆どです。

さらに細かく言えば、
当該レートのTTS(対顧客売値)とTTM(対顧客中値)のいずれを用いるか、という論点もあります。

会社として銀行からはTTSでしか為替調達はできませんので、それを用いる会社が多いですが、
駐在員の便益を考えて為替スプレッドは会社が被り、TTMを用いる会社も存在します。

経済そして人の移動がグローバル化してくると、
人事部門の業務も為替レートと無縁ではなくなることになります。

 

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≪2021年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.226より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie