2021年11月25日 (木)

海外子会社等との取決め

最近、海外子会社等との契約につきレビューして欲しい、というご相談をよく受けます。
大きく分けて、日本の会社から社員を海外に赴任させる場合と、
海外の会社から出向者を日本の会社で受け入れる場合の、二つのパターンです。

前者の場合であれば、日本の会社は海外赴任規程を整備し、
駐在員とは赴任中の処遇につき覚書等を結びます。
後者の場合は、日本で勤務している間の労働条件につき、
日本の会社と出向者との間で、契約書により確認するのが一般的です。

そして、どちらの場合も、当該社員の処遇および費用負担につき、
海外の会社と日本の会社との間で書面により取決めをしておくことが、
リスク管理の観点からもあるべき姿となります。
この取決めがないと、当該社員の最終的な労働条件がはっきりしなかったり、
コストを両社がどのように按分負担するか、後で揉めることがあるからです。

上記の会社間契約で取決めておくべき事項は、海外赴任か、日本での受け入れかにより異なってきますが、
共通事項としては以下のものが代表的です。

● 給与・手当の明細と負担
● 労働時間・休日・休暇
● 税・社会保険の扱い
● 一時帰国休暇
● 健康診断
● 住宅・光熱費・自動車の費用負担
● 出張時の経費・日当

特に、両社間での給与・手当の分担については、文書による事前の取決めが重要です。
後で揉めることが少なくないばかりか、寄附金課税による法人税への影響
標準報酬月額の決定による社会保険料への影響もありうるからです。

我が国では、100%親子会社間だからと、阿吽の呼吸に頼る傾向も強いですが、
相手方は取引先等の場合もあり、税務上の問題は阿吽の呼吸では解決しません。

この会社間取決めに関する最近の特徴としては、やはり新型コロナ感染症に関する事項があります。
万一、当該社員が罹患した場合の対応や、治療費の会社負担の限度額
そして感染症の影響で赴任・滞在期間が予定より長引いた場合の対応について規定している例が増えています。

会社間の契約に対する助言といえば、一般には弁護士というイメージがあると思われますが、
人事労務に関することであれば、社労士も対応可能です。
海外子会社等との契約についてもご相談されてみてもいいかもしれません。

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≪2021年11月1日発行 マロニエ通信 Vol.225より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie