育児・介護休業法および雇用保険法の改正

令和3年7月30日に公表された令和2年度の雇用均等基本調査の結果によると、
男性の育児休業者の割合は12.65%で、令和元年度調査の7.48%から大きく上昇しました。
政府は令和7年度の目標として取得率30%を掲げているところですが、
この度、男性の育児休業取得促進策を盛り込んだ改正法が可決・成立しました。
令和4年4月1日から順次施行されます。出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、
男女ともに仕事と育児等を両立できるような枠組みの創設が趣旨となっている
本改正のポイントについて解説いたします。

男性の育児休業取得促進−出生時育児休業の創設

「出産後の妻の心身の回復が必要な時期にそばにいたい」、「育児に最初から関わりたい」
といった男性側のニーズがあることを踏まえ、「出生時育児休業」が創設されました。
男性版産休」とも呼称されるように、男性の育休取得促進のために利用しやすい仕組みとなっています。
なお、現行法においても、子の出生後8週間以内に男性が育児休業を取得することを想定した
パパ休暇制度がありますが、これに伴い廃止されます。
(施行日:公布日から1年6ヵ月を超えない範囲内で政令で定める日)


出生時育児休業のポイント

※休業中の就労については、労働者の意に反したものにならないよう、
労使協定を締結している場合に限り、事前に調整した上で合意の範囲内でのみ可能となります。
具体的な流れとしては、労働者が就労しても良い場合は事業主にその条件を申出し、
事業主は申出条件の範囲内で候補日・時間を提示し、労働者が同意した範囲内で就労することになります。
なお、就労可能日数の上限が設けられる予定です。

「出生時育児休業」は、育児・介護休業法において新設される制度ですが、
これに伴い雇用保険にも「出生時育児休業給付金」が創設されます。
給付率等は現行制度と同様で、67%の給付率が適用される6ヵ月間については、
出生時育児休業や次で解説する分割取得した育休など、いずれの期間も通算されます。
なお、育休を複数回取得した場合であっても、被保険者期間要件の判定や、
休業開始日前賃金日額の算定については、初回の休業開始日が基準とされます。

 

子が1歳になるまで最大4回の分割取得が可能に

出生時育児休業が2回までの分割が可能であることに加え、現行の育休制度も2回までの分割が可能になります。
つまり両制度を合わせて利用すると、子が1歳に達する日までの間に最大4回に分けて育休を取得することが可能になります。
これにより夫婦が交代して育休を取得しやすくなるほか、保育所に入所できない等の理由による
1歳以降の育休延長時の期間途中でも夫婦交代での育休取得が可能になります。
(施行日:公布日から1年6ヵ月を超えない範囲内で政令で定める日)

 

企業に求められる対応とは

下記2点は施行日が来年4月1日となっており、企業においては最も早い対応が求められます。

●育休を取得しやすい雇用環境整備
新制度および現行の育休を取得しやすい雇用環境の整備が事業主に義務付けられます。
具体的な措置としては、育休にかかる研修の実施育休に関する相談窓口の設置のほか、
制度や取得事例の情報提供等です。

●妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
労働者本人または配偶者が妊娠または出産した旨等の申出をしたときに、当該労働者に対し育休制度等を周知するとともに、
これらの制度の取得意向を確認するための措置が事業主に義務付けられます。
事業主が取得意向を個別に確認することで、労働者にとっては申出がしやすくなると言えるでしょう。

上記の改正内容のほか、有期雇用労働者の休業取得要件が緩和され、
事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外するためには、
労使協定の締結が必要となります(施行日:令和4年4月1日)。
また、従業員1,000人超の企業を対象に育児休業の取得状況について
公表が義務付けられる(施行日:令和5年4月1日)ことで育休取得率の向上が期待されます。

 

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≪2021年9月1日発行 マロニエ通信 Vol.223より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie