2021年08月19日 (木)

65歳以上複数就業者の雇用保険加入

人生100年時代と呼ばれる昨今、政府は、高年齢者が健康で意欲と能力がある限り、
年齢に関わりなく働き続けることができる社会の実現を目指しています。
そのような背景から令和2年3月31日に雇用保険法等の一部を改正する法律が成立しました。
令和3年4月から定年年齢の引上げや65歳以降の継続雇用制度導入などの
高年齢者就業確保措置(努力義務)が施行される等、様々な改正がされておりますが、
今回はその中から、令和4年1月1日施行の複数事業所で働く高年齢者の
雇用保険加入に関する特例制度について説明いたします。

 

加入要件について

●既存要件

現状、1つの事業所で次の2つの要件を満たす方が雇用保険に加入します。
①1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
②31日以上の雇用見込みがあること。

 

●新要件

新たに、複数の事業所で働く高年齢者が、次の3つの要件を全て満たすときは、
雇用保険に加入できるようになりました。
①2つ以上の事業所で雇用される65歳以上の者であること。
②全ての事業所での1週間の所定労働時間が20時間未満であること。
③2つの事業所(※)における1週間の所定労働時間の合計が20時間以上であること。

※1つの事業所での1週間の所定労働時間が5時間以上であること。
「既存要件」を全て満たした場合、雇用保険への加入は義務ですが、
「新要件」を全て満たした場合は本人が申し出た日から雇用保険に加入することができます。

 

 

失業時の給付について

失業時の給付については、複数事業所で働く場合も現行の制度の通り
一時金として高年齢求職者給付を受給することが可能です。
2つの事業所の両方を離職した時ではなく、いずれか1つの事業所のみを離職する場合でも
雇用保険の資格喪失となり、高年齢求職者給付を受給することができます。
その場合、離職した事業所での賃金に基づいて金額が算出され給付を受けることになります。

今の段階では具体的な事務手続きについてまだ定まっておらず、今後省令等で明確化される予定となっています。
複数事業所の労働時間を合算する今までとは大きく異なる考え方をする制度となります。
「既存要件」と「新要件」、それぞれの要件で雇用保険に加入する人が混在することになります。
加入要件ごとに分けて管理することが望ましいでしょう。

 

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≪2021年8月1日発行 マロニエ通信 Vol.222より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie