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共働き夫婦の子の扶養認定基準が、昭和60年以来36年ぶりに一部変更されました。
子を夫婦いずれの扶養とするか選択可能な所得税と異なり、
健康保険は年間収入が多いほうが被扶養者の人数に関わらず扶養することになります。
しかし、夫婦間で収入が同程度の場合にどちらの扶養とするか
夫婦双方の保険者(健康保険組合・協会けんぽ等、健康保険事業の運営主体)で
判断が分かれるケースが出てきたため、その際の取扱いを含め認定基準が変更されることとなりました。
「年間収入」および「同程度の収入」とは
今回の変更に伴い「年間収入」の定義変更、「同程度の収入」について新たに定義されました。
●年間収入
過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだもの
●同程度の収入
夫婦間の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内であること
双方の保険者から扶養の認定が行われない場合の取扱い(新たに運用が明確化)
夫婦の収入が同程度あった場合、双方の保険者で扶養の認定がされないケースが発生することがあります。
具体的には下記のように、双方の保険者が相手方の扶養に入れるよう主張することがあります。
妻保険者:妻は産育休中で収入が夫より低額となるため、子は夫の扶養である。
夫保険者:妻は産育休中のため一時的に給与を受け取っていないだけで、休職前の給与を基に比較すると、夫のほうが妻より低額のため、子は妻の扶養である。
①双方の保険者で不認定となった場合には、まず保険者間で協議を行う
②協議が不調に終わった場合には先に届出を行った時点での標準報酬月額が高いほうの扶養とする
このような場合の運用は下記の通り明確になりました。
この新しい運用に従えば、今回のケースは妻の扶養に入れることとなります。
産育休取得時の子の扶養異動の取扱い(従来の取扱いを変更)
●育児休業等を取得したとしても特例的に休業期間中は被扶養者を異動しない
●年間収入の逆転に伴い、被扶養者を削除する場合には、収入が多くなった側の保険者が認定することを確認してから行う
※ただし、新たに誕生する子については、改めて認定手続きを行うことになります。
妻が子を扶養している状態で産育休を取得すると今後収入の減少が見込まれることから、
子を夫の扶養に切り替えるよう保険者から案内されるケースがあります。
今回その都度保険者を変更することの煩雑さや、
Point2のように夫の保険者で扶養の認定がされない可能性があることから、
被扶養者の地位を安定させる観点より運用が変更されました。
今回の認定基準変更後も手続き時の確認書類の指定などについては引き続き保険者判断とされており、
実際に手続きを行う際には、事前に双方の保険者に確認を行いながら申請を進める必要があります。
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≪2021年8月1日発行 マロニエ通信 Vol.222より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie