2021年07月29日 (木)

海外赴任手続きにおける留意点

コロナ禍により、国境を超えた人の動きはかなり制限されていますが、徐々に動きは出ておりますので改めて、
給与計算や社会保険手続きにおける主な留意点について、まとめておきたいと思います。
なお、中小企業の社員が海外赴任する場合は、日本から給与が払い続けられ、
社会保険も継続するケースが圧倒的多数ですので、その前提での記述となります。

給与計算で最も基本になるのは、海外赴任者は非居住者であり、
かつ役務の提供を日本国外で行いますので(国外源泉所得)、所得税は非課税となることです。
これは、海外赴任者が日本の本社向けの業務を行っていても同じです。
ただし、賞与や残業代など、過去に日本で勤務したことに対応する報酬を受け取った部分は、
国内源泉所得とみなされ、20.42%の非居住者源泉所得税の対象となります。

前年度所得に対応する住民税は、海外赴任前に一括徴収するか、
赴任後も日本から支払われる給与から特別徴収する形が基本になります。
赴任後は課税所得が発生しませんので、対応する住民税も発生しないことになります。



なお、当然ながら、別途、現地での所得税・住民税は発生します。
その計算には現地の会計事務所等を使うことになりますが、
日本からの赴任者の取り扱いに慣れた業者をお勧めします。

社会保険に関しては、日本の社会保険を継続するにしても、介護保険の適用除外対象となります。
赴任期間中、介護保険料の納付を免除されても、給付を受ける時点で不利にはならないので、
忘れずに適用除外届を提出したいものです。

最近の動向で注意すべきは、2020年4月1日以降、厚生年金保険加入者の被扶養配偶者である
国民年金第3号被保険者の認定に、日本国内居住要件が加わったことです。
海外赴任に同行する家族は、国内居住要件の例外(海外特例)として扱ってもらうことができ、
該当する人は、届出により国民年金第3号被保険者としての認定が可能です。
なお、海外特例の有無にかかわらず、日本に帰国して住所を有した場合には、
第2号被保険者の勤務先を経由して届出が必要となります。

紙幅の関係で紹介しきれませんが、納税管理人の指定など、人事担当者が知っておくべき事項は他にもあります。
特に初めて海外赴任者を送り出す場合には、専門家の助言を受けていただきたく存じます。

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2021年7月1日発行 マロニエ通信 Vol.221より≫
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