2021年05月27日 (木)

外国人労働者特有の取り扱い

労働基準法第3条は、労働条件面での国籍による差別を禁止しており、
また社会保険関連法や税法も、外国人と日本人とで同一の取り扱いを原則としています。
ただ、若干の例外もありますので、実務上注意が必要です。

社会保険の分野では、厚生年金の脱退一時金制度がその典型です。
日本に中長期滞在した労働者が出国する際、支払保険料が掛け捨てにならぬよう、
最大5年分の保険料を裁定請求できる、外国人だけに認められている制度です。

税の分野では、外国人だけに適用される制度がさらに多くなっています。
例えば、日本に入国して5 年以内の外国人には、
「非永住者である居住者」という特別な所得税法上の地位が与えられ、
国内源泉所得および日本で支払われた等一定の国外源泉所得のみが課税されます。

これは、日本人が居住者として日本に入国すれば、国内・国外源泉を問わず、
直ちに全世界所得課税されることとは対照的です。


そして、日本では今すでに、外国人の同性カップルの場合、
所得税法上の配偶者控除を受けられる可能性があることをご存知でしょうか。

所得税法第83条は、控除対象配偶者がいる場合は、
38万円の配偶者控除が受けられることを定めています。
しかし所得税法には「配偶者」の定義が定められていないことから、
所得税基本通達2-46が、配偶者は民法の規定による配偶者をいうとし、
市区町村等に婚姻の届出をした配偶者としています。

さらにその注釈において、外国人で民法の規定によれない者は、
法の適用に関する通則法」の規定によることに留意する、とあります。
ここで同通則法第24条を見ると、
婚姻の成立は、各当事者につき、その本国法による」となっています。

よって、例えば、日本に住むアメリカ人の同性カップルが、
カリフォルニア州で合法的に婚姻したのであれば、
所得税法上の配偶者として認められ、配偶者控除も受けることができると解釈できます。

この扱いに関し、国税庁からの正式の発表は現時点ではありませんが、
筆者が東京国税局の確定申告相談センターに確認したところ、
その通りとの明確な回答を得ました。

本来、外国人の法的権利義務に関する基本法が制定されるべき
と主張される識者の方もいらっしゃいますが、まだ具体化はされそうにありません。
当分は、税・社会保障の分野においても、パッチワーク的に取り扱いが定められ続けるでしょうから、
留意が必要となります。

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2021年5月1日発行 マロニエ通信 Vol.219より≫
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