2021年03月25日 (木)

特定技能外国人の受け入れ

親しい行政書士や外国人材紹介会社の方が、
「今年は特定技能の外国人に関する業務に注力したい」
と仰っていました。

コロナ禍の影響も大きく、2020年6月現在で受け入れ人数は約6千人にとどまり、
当初の受け入れ見込みであった約35万人には遠く及びませんが、
今後は日本人の応募が少ない業種での貴重な戦力として、企業での受け入れは増えていくでしょう。

しかし、「特定技能」は新しい在留資格であり、通常の就労ビザ取得者や技能実習生とは、
労務上の留意点も異なってくることを指摘しておきたいと思います。

採用

不正な職業紹介ブローカーの介在による手数料の搾取が問題視されています。
特定技能外国人は直接雇用の対象であり、
受け入れ企業は職業紹介の許可を持つ紹介事業者を使う必要があります。

登録支援機関認定業者においても、職業紹介の許可は別途必要であり、
技能実習制度における監理団体とは、その点が異なります。

労働条件

外国人であることや特定技能であることを理由として、賃金体系や有給休暇の日数を
日本人従業員と異なるものにすることはできません。
異なるものにする場合は、職務内容や責任範囲の違いなど合理的な理由が必要になります。

雇用契約書や就業規則の内容を、いま一度確認しておきましょう。

安全衛生

特定技能の業種には、建設業など労働災害の発生率の高いものも含まれています。
特定技能の外国人は、入国時点で日本語能力N4以上という条件になっており、
日本語の理解力が決して高いとは言えません。

安全衛生教育を注意深く行い、社内掲示物の母国語による表示など、
特定技能の外国人も理解できる工夫が必要となります。



退職

特定技能の外国人は、技能実習生とは異なり、自由に転職することができます。
外国人が退職するにあたっては、突然出社しなくなるケースも目立ちますので、
そのような対応では失業保険や脱退一時金の給付などで自分が不利になる可能性もあることを説明し、
事前の申告や引継ぎの義務があることを周知しておきましょう。

また、退職して就職活動などもせずに3ヶ月を経過すると、在留資格の取消事由となります。


介護、建設、農業など、日本人の採用が難しい業種においては、
特定技能外国人への期待は高いものがあります。
受け入れ企業としては、法令遵守と同時に、新たな人材を積極的に活用して、
人事体制のレベルアップを図ってみてはいかがでしょうか。

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2021年3月1日発行 マロニエ通信 Vol.217より≫
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