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以前、ウーバー社などのライドシェア運転手に関するカリフォルニア州での
訴訟について記しましたが、これについて去る10月22日、第二審も、
運転手をCA州労働法上の「独立請負業者」(Independent Contractor)ではなく
「従業員」(Employee)として扱うように判示しました。
これに従えば、会社側は運転手に対し、従業員としての社会保障(労災や老齢年金等)を
与えると同時に、その事務コストも負担しなくてはなりません。
もともと収益性が高くないライドシェア各社は、これではCA州において
事業が継続できないとして、住民立法案「プロポジション22」を成立させるため動いています。
本判決は、CA州において本年1月、ギグワーカーを請負業者でなく
従業員として扱うよう義務付ける新法「AB5」が適用されたために下されたものですが、
「プロポジション22」は、ライドシェア運転手をその例外と位置付ける立法で、
この11月上旬に住民投票が予定されています。
会社側は、この投票に社運を賭けており、成立のために既に1億ドルを費やしていると報道されています。
ライドシェアという世界中の注目を浴びている最先端のビジネスモデルの命運が、
一つの州の住民投票にかかっている状態と言えるのです。
これに対して、そもそも厚い社会保障に護られた「従業員」と、
全くの自己責任である「自営業者」との二者択一であることに無理がある、という議論があります。
我が国でも、神戸大学の大内伸哉教授などが、「名ばかり自営業者」を護る
「中間的セーフティネット」の創設を唱えておられます。
仕事の発注主との力関係からみて、対等の業務委託関係とは言えないものの、
「自営業者」として社会保障のセーフティネットを受けられていない業種が数多く見られるからです。
この「名ばかり自営業者」を護る「中間的セーフティネット」創設の考え方は、
社会厚生の見地からも注目に値しますが、
「どのような業種を対象にするのか」
「中間的セーフティネットの具体的内容は何にするのか」
「消費税の仕入税額控除などの税制はどうするのか」
「社会保険料の負担はどう配分するのか」
など、細部の詰めにはかなり時間がかかることが予想されます。
新しい時代の働き方を支えるセーフティネットの議論が、日本でも早く本格化することを願っております。
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≪2020年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.214より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie