2020年10月22日 (木)

ギグエコノミーと新しい働き方

インターネットを通じて単発の仕事を行うアドホックな働き方や経済形態は、
ギグエコノミー」と呼ばれて世界中で隆盛であり、ライドシェアのドライバーはその典型ですが、
そこに冷や水を浴びせるような出来事がありました。

昨年8月に、米カリフォルニア(CA) 州上級裁判所が、ライドシェア各社にドライバーを
「従業員」(Employee) として扱うよう、仮命令を下しました。
これに対して、配車大手ウーバーのコスロシャヒCEO は、ウーバーの営業を
CA 州では取りやめる可能性に言及し、上訴すると発表しました。

これまでライドシェアのドライバーは、CA 州労働法上の「独立請負業者」(Independent Contractor)
として扱われてきましたが、CA 州司法長官は、この扱いは誤りであり、
労働者から最低賃金や残業手当、労災保険、有給休暇、雇用保険を奪ってきたと主張しました。

これに対してウーバーなどは、ドライバーの大半は柔軟な働き方を希望しており、
一定の運賃設定をドライバーに委ねるなど、業務に裁量権があると反論しました。

しかし、CA 州上級裁判所は、今年1月に施行された、ギグワーカーを請負業者でなく従業員として
扱うよう義務付ける新法「AB5」の適用に関し、過去の判例で示された「ABC テスト」を採用し、
ライドシェアドライバーを「従業員」として扱うように結論付けました。


ABC テスト」では、雇用主が労働者を「独立請負業者」として分類するには、

A. 労働者は雇用主の管理や指示を受けていない
B.雇用主の事業以外の業務も行っている
C.定期的に独立性が確立された仕事に従事している


という3点の証明が必要とされます。
ウーバーなどは、この証明を裁判所に認めてもらえませんでした。

これにより、ウーバーなどギグワーカーを抱える会社は、社会保障関係費用や
ペイロール業務負担などで、人件費関係コストが20から 30% 上昇すると言われています。
ライドシェア各社は、現状でも財務的には脆弱であり、
これでは事業として成立しなくなることが危惧されます。

ギグエコノミーは、ビジネスモデルとして新しく、新しい働き方を創出する
エンジンとして注目されていますが、最先端の国アメリカでも、このような問題が起きています。
新しい働き方が発展していくためには、まだまだ試行錯誤が続くでしょう。


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2020年10月1日発行 マロニエ通信 Vol.212より≫
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