2020年08月27日 (木)

一時帰国と再赴任リスク

新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、日本企業の人事部門にも、
前例のない挑戦を突きつけています。
その一つが、海外赴任者の一時帰国と再赴任を巡る問題です。

パンデミックに対応して、多くの企業が海外赴任者を日本に一時帰国させました。
現地でコロナに感染した場合のリスクを考えれば、当然とも言えます。
十分なリスク管理もなしに、帰国コストを理由に赴任地に留めておいては、
企業の安全配慮義務違反を問われかねません。


一方、帰国させた場合であっても、人事部門には諸々の問題が降りかかってきます。
例えば、いつ再赴任するか見えない中で、一時帰国中にどんな仕事をしてもらうかという、
人事管理上の問題です。

加えて、一時帰国の期間と赴任国との租税条約との関係により、当該社員の居住者/非居住者の区別が変わり、
課税関係が異なってきます。
また、海外赴任者にはハードシップ手当等の特別手当が支給されていることも多いので、
国内勤務者との公平性からみて、一時帰国中もそうした手当を支給するのか、
という論点もあります。

そして現段階の大きな問題として、いつ再赴任させるべきか、という点があります。
現地でのビジネスニーズは重要ですが、再赴任させたら現地で罹患、最悪の場合
死亡という可能性も存在します。
このとき、会社が十分な安全配慮義務を履行していなければ、遺族から訴えられる
リスクも内包しています。

再赴任させるか決定するにあたっては、少なくとも、
①現地の感染状況
②現地への入国の容易さ
③現地の医療状況
④日本への再帰国の容易さ

については勘案する必要があるでしょう。

具体的には、赴任国ごとの
①一定人口当たりの感染者数と死者数、
②ビザの発給状況と入国時のPCR 検査/ 隔離政策、
③通常時とコロナ発症時の医療レベル
④帰国航空便の頻度、

といった情報を収集し、外務省の渡航危険情報も総合して、判断する必要がある
と思われます。

 特に中小企業では、各国別にこうした情報を収集するには限界がありますが、
専門機関の助力を得るなどして、赴任者の安全衛生を守り、会社自身のリスク管理に
配慮すべきでしょう。

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2020年8月1日発行 マロニエ通信 Vol.210より≫
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