2020年06月04日 (木)

休業手当の考え方

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの企業が休業や営業の縮小を余儀なくされています。労働基
準法では使用者側の事情で従業員を休ませた場合に休業手当の支払いを義務付けていますが、休業手当が
支払われないという声も聞かれます。今回は、この休業手当についてあらためて考えてみます。
<注>新型コロナウイルスおよび助成金の施策等については5月11日時点での状況にもとづいています。

[Point1]休業手当の目的

 使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、

その平均賃金の100分の60以上を支払わなければならない。労働基準法第26条)

 休業手当の目的は、労働者が最低限の生活を行えるようにすることにあります。労働者が生活に困ることがないよう、使用者の都合により休ませた場合には最低でも平均賃金の6割の手当を支払うよう法律で定めています。


[Point2] どのような場合に支払うべきか

 「使用者の責めに帰すべき事由」とはどのようなケースにあたるのか、新型コロナウイルスの状況にあてはめて考えてみます。

 ●本人が感染または感染予防のため自主的に仕事を休んだ →該当しない
 ●感染予防のため一律に自宅待機を命じた →該当する
 ●売上が落ち社員を交替で休ませた →該当する ※要件を満たせば雇用調整助成金の対象となる
 ●緊急事態宣言による要請を受け営業自粛 →該当する※要件を満たせば雇用調整助成金の対象となる

 社会的な要請に基づく措置であっても、天災事変等の不可抗力な場合以外は休業手当が必要といえます。法的には不要なケースであっても、会社として一定の支払いを検討することが好ましいと考えます。 なお、手当の有無だけでなく休業をさせるにあたっては労使間での話し合いも重要です。


[Point3] どのくらい払うべきか

 上述したように、休業手当は「平均賃金の100分の60以上」と決められています。

(月給制の場合)
該当する事由の発生した日以前3か月に支払われた賃金総額÷その期間の総日数×休業日数×0.6

※日給制・時給制の場合はその期間の労働日数で割ります。
※先月号でご紹介した雇用調整助成金のガイドブックでは、平均賃金ではなく月額給与を所定労働日数で割った計算も認められています。

<参考>休業手当とは別の観点となりますが、感染や、感染の疑いがある病状により自宅待機をして4日以上就業できなかった際は健康保険の傷病手当金を受けられます。このとき、やむをえない理由により医師の証明を得られない場合は事業主の証明により受給できる措置がとられています。

詳細は厚生労働省の資料をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000604969.pdf

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2020年6月1日発行 マロニエ通信 Vol.208より≫
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