在宅勤務海外事情

新型コロナウイルス感染症の猛威は衰えず、世界中の経済活動が大きな影響を受けていますが、
その現れの一つが在宅勤務の広がりです。


米IT大手グーグルでは、世界12万人の正規社員のうち、北米大陸の社員全員に対し、
在宅勤務を推奨しました。
一つの大陸全ての社員というのは、同社が初めてということです。
グーグルのグローバルセキュリティ担当幹部は、
「在宅勤務の目的は、オフィスにおける人口密度を薄めて健康リスクを低下させること、
同時にコミュニティと医療機関の負担を軽減することである」とコメントしています。
これとは別に、グーグルは、社内カフェなど時給ベースで働く社員の給与を補填すると発表しました。
また、COVID-19ファンドを組成し、契約社員やベンダーがコロナウイルス感染症や
そのおそれにより欠勤した場合でも、報酬を受け取れるようにするとのことです。
日本では厚生労働省や東京都がテレワーク推進のための助成金制度を創設していますが、
米国では政府が助けるというより、企業があくまで自らの力で根付かせようとしています。

よって、良くも悪くも、企業間の格差が鮮明となります。


では、在宅勤務制度は良い面ばかりで、諸手を挙げて賛同すべきものなのでしょうか?
この点に関しては、スタンフォード大学ニコラス・ブルーム教授の2014年の論文が示唆に富みます。
ある旅行代理店を舞台として調査した結果、在宅勤務の社員は、オフィスで働く社員より
13%生産性が上回ったとのことです。

一方で、その多くは、同僚との意見交換がないために、創造性が生まれず、問題解決に
時間がかかるようになったと感じたそうです。

また、公私の時間の区別がつけづらいため、休憩や休暇をあまり取らないようになり、
ワークライフバランスはかえって悪化したという回答が多かったのです。

孤独感は在宅勤務のデメリットであることから、コワーキングスペースが人気を集めていますし、
時間を決めて社員同士がオンラインで仕事以外の話をお喋りできるブレイクタイムを設けている
会社も出始めています。

日本で在宅勤務の課題というと、労働時間管理やセキュリティ保全がまず重要でしょう。
それに加えて、先行する海外での事例を見ておくことは、参考になるのではないでしょうか。

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2020年5月1日発行 マロニエ通信 Vol.207より≫
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