2020年04月23日 (木)

基準の違い

本稿執筆時点では、新型コロナウイルス感染症が世界で猛威を振るっており、
収束が見通せないレベルになっています。
ここで知ったことの一つは、各国で検査・対策基準が異なるということです。

例えば、ダイヤモンド・プリンセス号船内の日本人は、一定期間の隔離後、ウイルス検査の結果が
「陰性」であれば、そのまま下船が認められ、公共交通機関を利用して帰宅しました。
一方、チャーター機に乗らずに下船したアメリカ人は、CDC(米疾病管理予防センター) の
定めるウイルス検査方法で「陰性」とならなければ、帰国が認められませんでした。
これは、鼻腔スワブと咽頭スワブの両方を、最低24時間空けて2セット行う、というものでした。
これに対して日本では、咽頭スワブのみを1回行うのが通常でした。
米国CDCの基準は厳しいと言える反面、鼻腔スワブは激しく咳き込む被験者も多く、
特に高齢者には危険と指摘する医療関係者もいました。
いずれにせよ、同じ「陰性」でも、国により基準が違ったことは確かです。


雇用・労働の現場でも、日本と海外では異なることが多いと言えます。
例えばアメリカでは、採用時審査に提出してもらう履歴書に、年齢・男女別の記載を
求めることはできず、写真の貼付要請は違法となります。
年齢・性別・外見等による差別を防ぐためです。
一方で、能力不足など、差別によらない理由であれば、いつでも解雇できる
雇用慣習(Employment-at-Will)があります。

外国人が急増している日本の雇用現場でも、アジア諸国からの労働者の意識基準が
日本人とは異なることを目の当たりにします。

金銭感覚について欧米の人たちと同様あるいはそれ以上にドライで、少しでも高い給与の
会社を見つけると、直ぐにそちらに転職してしまうという悩みを持つ雇用主の方は多いです。
また、こちらが教育のつもりでも、叱責されることは人格の否定と感じ、これが原因で
退職してしまう労働者も多いと聞きます。
そして、家族との絆は日本人以上に強く、ともすれば与えられた仕事より家族との用事を
優先してしまうことも珍しくありません。

財・サービスの流れに国境がなくなり、人の動きもボーダーレス化してくると、
異なる基準を受け容れながらビジネスを進める度量が求められると言えるでしょう。


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2020年4月1日発行 マロニエ通信 Vol.206より≫
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