2020年03月26日 (木)

同一労働同一賃金の先に目指すもの

こんにちは、代表の黒川です。

雇用形態に関わらず公正な待遇の確保を目指す「同一労働同一賃金」が
大企業はこの4月から、中小企業は来年から義務化
されます。
この改正では同様の業務を行う場合には正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間に
不合理な待遇差があってはならないとされています。
さて、スムーズに進むのでしょうか。懸念の原因は、日本の給与体系にあります。


まず、なぜ同一労働同一賃金が義務付けられたのでしょうか。
そこには賃金格差があったからですが、正規と非正規の賃金格差は以前からありました。
しかし、正社員が多数派の時代には派遣だから安くても仕方ない、
契約社員だから昇給がなくて当然と、低所得を甘んじて受け入れざるを得なかった人が多かったように思います。

そして社会は少しずつ変化し、女性やシニアの社会進出と活躍により、
以前は少数派であった非正規形態で働く人は全体の4割近くにも増加しています。
つまり非正規雇用がマジョリティとなりつつあることから、
仕事内容が同じなのに性別や年齢を理由に賃金が低いのは不合理だ、
という流れが強くなってきた背景があります。
これからさらに増え続ける非正規雇用労働者の声は無視できない状況になってきていると言えます。


同じ仕事をしているのになぜ非正規だと賃金が低いのでしょうか。
私はむしろ高くあるべきと考えています。
非正規という働き方には、雇用期限が決まっていて将来の保障がないというリスクがあります。
一方で企業にとっては一時的に人材を補うことができて都合が良い面もあります。
リスクを負わせて都合良く使っているのであれば、高い報酬を払ってもいいはずではないでしょうか。
しかし正社員信仰の強い日本では簡単にはいかないでしょう。


では同一労働の定義はどのように考えるべきでしょうか。
日本では給与体系や待遇は一概に業務内容だけで決められているわけではなく、
勤続年数、個人の特性や貢献度、あるいは将来への期待も織り込んで設計されていることもあります。
労働者が持つ要素を全体的に見て決めていることがほとんどです。
そこに難しさがあり躓く企業が多いのではないでしょうか。
正規社員の賃金は業務内容だけで決めていないとなると、それに合わせて他の雇用形態の待遇を上げればいいという
単純な話ではないからです。

またどのように同一賃金にするかという点では正規に合わせて非正規の待遇を上げることが難しいとなると
逆に正規を下げるという考え方も出てきそうですが、そうなれば正規と非正規に対立関係が生じるでしょう。
これが男女だとしても、低い方に合わせれば高い方のモチベーションは下がります。
しかし高い方に合わせたからといって低い方のモチベーションが上がるかというと、
実はそうではないのではないでしょうか。
賃金や待遇といった衛生要因が満足やモチベーションアップと直結するとは限らないからです。


同一労働同一賃金へ整備し目指すべきものは単純に賃金額を同じにすることではなくて、
賃金や待遇の不合理な格差を是正した結果、生産性が上がることです。
安易に金額を揃えるだけでは施策の成功とは言えないのです。
そのためには日本企業が続けてきた一つの慣習を捨てなくてはいけないかもしれません。