2019年12月05日 (木)

台風の被害に伴う休業の取扱いについて

今年は度重なる台風の上陸により多くの事業場が被害を受けられ、事業活動への影響が生じました。
今回はこのような非常事態の休業の取扱いについて解説します。

[Point1] 休業手当の支払い

労働基準法第26条では、実施する休業が「使用者の責めに帰すべき事由」によるもの
である場合は、「休業手当」の支払いを義務付けています。
この「使用者の責めに帰すべき事由」とは、どんな場合に当てはまるのでしょうか。


「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、
使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。」(法26条)


天災事変等の不可抗力の場合は、使用者の責めに帰すべき事由にあたらず、使用者に
休業手当の支払い義務はありません。

ここでいう不可抗力とは、その原因が以下の2つの要件を満たすものでなければならないと
解されています。

①事業の外部により発生したものであること
②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできないものであること

上記の要件を踏まえて具体的なケースを見てみましょう。


 [Point2] 具体的な休業のケース

●事業場が直接的な被害を受け、休業させる場合
台風による水害等により事業場の施設・設備が直接的な被害を受け、その結果、休業させる場合は、
休業の原因が事業主の関与の範囲外であり、最大の注意を尽くしても避けられない事故に当たると
考えられますので、使用者の責めに帰すべき事由に該当しないと言えます。

●取引先や鉄道・道路が被害を受け、休業させる場合
事業場の施設・設備が直接的な被害を受けていないが休業させる場合は、原則は使用者の責めに帰すべき事由に
該当すると考えられますが
、取引先への依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、
使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し判断する必要があります。

●一日の所定労働時間の一部のみ使用者の責めに帰すべき事由により休業が実施された場合
この場合においても、その日について平均賃金の100分の60に相当する金額を払わなければなりません。
現実に就労した時間に対して支払われる賃金が平均賃金の100分の60に満たない場合はその差額を
支払う必要があります。

非常時の場合は個別事案ごとに諸事情を勘案すべきものですので具体的なご相談など詳細については、
所轄の労働基準監督署までお問い合わせください。

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/000562940.pdf
(厚生労働省HP「令和元年台風第19 号による被害に伴う労働基準法や労働契約法に関するQ&A」)

—————————————————————————————————-
2019年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.202より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie