2019年07月25日 (木)

ウーバードライバーにみる未来

先日、久しぶりにワシントンD.C.に出張した際に興味深い場面にいくつも遭遇しました。

その一つが、米国内の移動ではいつも利用している、ウーバー(UBER)のドライバーたちとの会話でした。

米ウーバー社は、世界最大級のライドシェアサービス会社で、

ドライバーは自分の空いている時間に、自分の所有車を用いて、タクシーと同様のサービスを提供しています。

特徴として、利用者はスマホにダウンロードしたウーバーのアプリを使って配車を要請します。

料金の支払いもアプリ上で登録済のクレジットカード等により完結し、その後でウーバー社からドライバーに、

手数料を差し引いた金額が報酬として支払われます。誰からも指揮命令を受けていないので、

ウーバー社とドライバーは雇用関係にないとされ、労働法上も税法上も、ドライバーはフリーランス(自営業者) として扱われ、

「新しい働き方」の一つとして、注目を集めてきました。

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しかし、今回何人ものドライバーとお話しして、実態はそれほどシンプルではないことを認識しました。

例えば、ドライバーは、アプリ上で利用者によるレーティング(評価) を受けることになっていますので、

その結果は即時ダイレクトにウーバー社に伝えられ、

あたかも仕事中にドライバーはずっと監視されているのと同様の効果があると言うのです。

このことから、ドライバーは雇用関係にあるとみなすべきであるという訴訟が、既に起きているとのことでした。

調べてみると、イギリスでは、ウーバー社のドライバーは雇用関係にあるとする判決が、既に存在しました。

今後、もしウーバー社のドライバーが雇用関係にあるという判決がアメリカで確定すれば、

同社は、例えば給与所得税や社会保障税(日本の社会保険料に相当) を源泉徴収し、

会社分を負担する義務を負うことになり、経営を揺るがす事態になるでしょう。

日本でもこれから、副業が認められるなど、「新しい働き方」が拡がっていくことは間違いないものと思われます。

しかし、それは一本の真っすぐな道ではなく、

会社・個人・政府といった関係者全てが試行錯誤を重ねながら、

新しい形態を模索していくことになるのではないでしょうか。


≪2019年7月1日発行 マロニエ通信 Vol.197より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie