2018年11月29日 (木)

特定技能と共生社会

様々な分野で人手不足が解消されていない現状に鑑み、政府は、就労を目的とする新たな在留資格を創設し、

外国人材の受入れを更に進めていく方針に舵を切りました。

その具体的内容は、2018年10月の関係閣僚会合で承認された、

外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」に関する法律案の骨子に示されています。

かなり詳細な対策が書きこまれていますが、

新たな在留資格(「特定技能」と仮称)の創設と、それに伴う「アメとムチ」の政策を列挙したものと要約できます。

今秋の臨時国会での議論によりますが、現時点で考えられている内容は以下の通りです。

「特定技能」の在留資格

「特定技能」の在留資格は、新たな業所管官庁の定める試験に合格、

または3年間の技能実習を修了したものに与えられることから、

これまでの「技術・人文知識・国際業務」在留資格のような専門性・技能を求められるものではなく、

単純労働に近い分野で認められることになります。

業種として、当初は人手不足が著しいとして、

「農業」「介護」「建設」「造船」「宿泊(観光)」が挙げられていましたが、

その後業界団体から「製造業」「水産業」「小売業」の中でいくつもの業種で追加の要望が出されて、

10数業種になるとの報道もあります。

生活者としての外国人に対する支援

生活者としての外国人に対する支援を前面に出しています。

具体的には、日本語教育の充実を柱としながら、行政・生活情報の多言語化、防災対策の充実、

子どもの教育の充実など、多岐にわたっています。

在留管理体制の強化

一方で、在留管理体制は強化するとしています。

入国管理局の「庁」への格上げや人員増と共に、厚生労働省との情報共有による外国人の在留・雇用状況の正確な把握、

警察等関係機関との協力により、不法滞在者への対策は強化する、とあります。

この政策転換によって、企業は人手不足をある程度解消できることが期待できます。

そして、より複雑となる労務管理において、我々のような専門家がお手伝いできる分野は増えるものと思われます。

一方で、新たな住民として外国人を受入れ、その支援を行うのは、行政を中心とした地域社会です。

その人的・金銭的負担は、誰が負うのでしょうか。

政府の掛け声はかなり先走っていますが、幅広い議論がなされ、

地域社会も納得するような共生社会が実現することと、強く願っております。

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≪2018年11月1日発行 マロニエ通信 Vol.189より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie