2018年04月24日 (火)

裁量労働制の運用が正しくできていますか?

昨今、厚生労働省の不適切なデータ処理や、

社員への違法な適用により過労自殺者が出るなどして話題になっている「裁量労働制」。

連日の報道の影響で、世間では“社員を残業代なしで働かせ放題にさせる制度”

として捉えられている方が少なくありません。

既に裁量労働制を導入されている場合、自社の運用が正しく行われているかどうか

不安に感じ始めたという会社もあるかもしれません。

裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画型裁量労働制」の2つがありますが、

今回は前者について解説させていただきます。

 

[Point1] 専門業務型裁量労働制とは?

実際の労働時間にかかわらず、

あらかじめ労使間で決めた1日に必要な労働時間分働いたとみなして賃金を支払う制度です。

業務の性質上、業務遂行の手段や時間配分の決定等を労働者の裁量に委ねる必要がある業務として

厚生労働大臣が定めた19業種に限り、適用することができます。

 

※専門業務型裁量労働制が適用できる業種

(1)研究開発 (2)情報処理システムの分析・設計 (3)新聞・出版・放送番組の取材・編集 (4)デザイナー (5)放送番組、映画等のプロデューサー・ディレクター (6)コピーライター (7)システムコンサルタント (8)インテリアコーディネーター (9)ゲーム用ソフトウェア創作 (10)証券アナリスト (11)金融工学等の知識を用いて行う金融商品開発 (12)大学における教授研究 (13)公認会計士 (14)弁護士 (15)建築士 (16)不動産鑑定士 (17)弁理士 (18)税理士 (19)中小企業診断士

 

 

[Point2] 専門業務型裁量労働制を導入するには?

次の事項について書面による労使協定に定めることが必要です。

①対象業務(上記19業種)

②労働時間としてみなす時間

③対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないこと

④労働時間の状況に応じた健康・福祉確保措置の具体的内容

⑤労働者からの苦情処理のために実施する措置の具体的内容

⑥協定の有効期間(3年以内とすることが望ましい)

⑦その他厚生労働省で定める事項

 

[Point3] 裁量労働制の適正な運用チェックポイント

□ 対象業務以外の業種の社員に裁量労働制を適用させていないか?

□ 社員に対して具体的な指示をせず、働き方を自由に決めさせているか?

□ 遅刻早退など厳密な出退勤の管理や、残業や休日出勤の指示をしていないか?

□ 過剰なノルマが設定されたり、仕事の量が多すぎて残業が休日労働せざるを得ない状況になっていないか?

□ みなし労働時間と実際の労働時間が乖離していないか?

□ 深夜(22~5時)、休日に働いたら別途残業代を支払っているか?

 

一つでもチェックがつかない項目がある場合、適法に運用ができていない可能性があります。

裁量労働制は社員が勤務時間を自主的に決めることができ、働いた時間の長さではなく成果で評価をする制度です。

悪い面だけが取り上げられがちですが、柔軟な働き方を提供することで業務の効率化を上げることができ、

労使双方に良い影響をもたらしている会社も多くあります。

法律で定める要件を満たさずに裁量労働制が導入されていれば、裁量労働制が無効と判断され、

これまで払っていなかった残業時間に対する賃金を支払う義務が生じたり、

過重労働に対して責任を問われることがあります。

この機会に自社の運用状況を見直していただけたらと思います。

 


≪2018年4月1日発行 マロニエ通信4月号 Vol.182より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie

 

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