2017年08月24日 (木)

光GENJI通達とアメリカの子役タレント

14歳のプロ棋士・藤井聡太四段の大活躍が注目を集めています。

対局は深夜に及ぶこともありますが、棋士は「個人事業主」であり、「労働者」ではないので、

18歳未満の労働者は午後10時から午前5時までの就労はできないとした労働基準法上の問題はないというのが、

日本将棋連盟の見解です。

 

つい連想してしまうのが、テレビ等で見かける子役タレントですが、

深夜出演は制限されています。これはなぜなのでしょうか?

実はこの現状には、旧労働省が1988年に発出した「光GENJI通達」と呼ばれる有名な通達が深く関係しています。

この通達では、タレントが「労働者」にあたるかは実態で判断するとして、

そのタレントの活動が他人によって代替できないことなどの4つの要件を満たした場合は「労働者」ではないという基準が示されました。

これをあてはめ、光GENJIのメンバーは「労働者」ではないとされたのです。

 

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ところが、個別判断は難しく、翌1999年には、15歳のタレントが深夜のラジオ番組に出演した際、

関係者が労基法違反で書類送検されてしまいました。この事件のインパクトは大きく、以後、プロダクションや放送局側が

「労働者」とみなされるリスクを回避して、未成年者の深夜出演を自主規制しているのです。

 

一方、海外ではどうなのでしょうか。

少し古いのですが、2006年に法政大学の永野秀雄教授が、アメリカでの演劇子役等の労働法上の保護につき、

興味深い論文を書いておられます。

これによれば、アメリカでは、連邦法としての公正労働基準法が未成年者の労働保護について規定していますが、

演劇子役等は適用除外なのです。そして、州の法律によって子役等の労働規制がなされています。

 

例えばハリウッドを抱えるカリフォルニア州では、18歳未満の未成年者は、出演は原則午後10時まで、

翌日に学校がない日は午前0時30分までと定められています。

ところが、同州には労働基準監督官が極端に少なく、当局によるチェックは不十分と言われています。

そしてそれをカバーしているのが、映画俳優労働組合なのです。

全米で12万人(うち子役が5,500人)の組合員を持ちますが、現場に人を送りこんで、労働状況をチェックしているそうです。

 

当局でなく、労働組合が未成年労働者の保護を実質的に担っているとは、やはりアメリカは資本主義の牙城と感じます。