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今回は、若手人材の獲得・定着に寄与する福利厚生として注目される
「奨学金返還支援(代理返還)制度」をご紹介します

奨学金返還支援(代理返還)制度とは?
奨学金返還支援(代理返還)制度は、従業員の奨学金を企業が肩代わりする制度です。
奨学金返還者の経済的負担を軽くし、社会で活躍してもらうため、
日本学生支援機構(以下、機構)が国と協議し令和3年4月に開始しました。
企業が従業員の奨学金返済を支援することを目的として
給与に一定額を上乗せする制度は従来から存在しましたが、
代理返還制度では、従業員の奨学金を企業が機構に直接送金するという点で従来の制度とは異なります。
導入のメリット
➀新卒・中途採用における若手人材へのアピール
比較的賃金水準の低い若手従業員にとって、奨学金返済は負担感が大きいと言われています。
この負担を軽減する制度を導入することで他社との差別化を図ることができます。
また、早期離職防止の効果も期待できます。
早期離職が減ることで、採用とトレーニングにかかるコストの削減にも繋がります。
制度実施企業名は機構サイトに掲載されたり、大学に紹介されたりすることになっており、
宣伝効果も期待できます。
➁所得税、社会保険料のメリット
支援額にかかる所得税は非課税となります。
これは、支援額が企業から機構へ直接送金されることで、通常の給与との区分が明確で、
かつ、奨学金返還の目的であることも明確であるためです。
また、支援額は、社会保険料算定の基礎である標準報酬月額の対象となる報酬に含まれません。
企業と支援対象従業員の双方にとって、社会保険料負担の増大が抑制されることになります。
③法人税の軽減
企業が返還した額が経費として認められる場合、返還額を損金に算入でき、
さらに、賃上げ促進税制の対象となります。
結果として法人税負担を軽減することにつながる可能性があります。
留意点
➀債務者は変更なし
代理返還といっても、法的には債務の当事者関係に変更があるものではありません。
債務者は支援対象従業員のままなので、企業の代理返還が遅れた場合、
機構から支援対象従業員へ督促されます。
➁減額措置に注意
代理返還制度を導入しつつ、給与から一部減額を行う場合は、給与に代えて支給されたとみられ、
所得税非課税及び社会保険における報酬除外とされない可能性があります。
制度設計には留意が必要です。
③対象外となるケースも
債務管理が複雑になる制度設計をした場合は、代理返還制度の対象外となる可能性があります。
また、役員の奨学金返還支援は、所得税非課税、損金算入となりません。
奨学金返還支援(代理返還)制度は、令和6年10月時点で2,587社に導入され、
返還支援対象者は7,000人余りです。
令和5年度、機構の奨学金を利用した学生は約117万人でした。
施策のアイデアのひとつとして、ご参考になれば幸いです。
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≪2025年4月1日発行 マロニエ通信 Vol.266より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie