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外国人雇用や海外赴任など、国境を越えた案件を扱っていると、
日本の国内法だけでなく、他国との取極め内容がポイントになることが、ままあります。
特に重要なのは、租税条約と社会保障協定ですが、
今回は趣向を変えて、関連取極めについての3つのクイズを出させていただきます。
1.短期滞在者免税
問:
社員が海外出張した際、日本からの給与所得に対し、
海外で課税されない基準は現地滞在183日以内が原則となっていますが、
日本との租税条約において、そうではない日数が規定されている国があります。
それはどこでしょうか?
A.アメリカ
B.イギリス
C.タイ
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答:
C.タイ
解説:
短期滞在者免税制度については、OECDのモデル租税条約で規定されており、
日本が他国と結ぶ租税条約でも、殆ど同一内容です。
モデル条約では、短期滞在者免税が認められる要件は、
①現地滞在日数が1年間のうち183日以内であること、
②報酬が現地から見て非居住者(法人を含む)から支払われるものであること、
③報酬が現地にある相手国の恒久的施設(PE)から支払われるものでないこと、
となっています。
この滞在日数制限を超えてしまうと、超えた分だけでなく、
滞在期間全体に課税されてしまうので、注意が必要です。
日タイ租税条約では、①が180日以内となっています(第14条1項)。
2.年金加入期間の通算
問:
社会保障協定は、年金保険料の二重負担の防止と年金加入期間の通算が主な内容ですが、
日本との社会保障協定において、年金加入期間の通算を認めていない国があります。
以下の国のうち、どこが当てはまるでしょうか?
A.アメリカ
B.イギリス
C.フランス
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答:
B.イギリス
解説:
社会保障協定は、年金保険料の二重負担の防止と
年金加入期間の通算の両方の規定を含むことが通例ですが、
国によっては、ポリシーとして加入期間の通算を認めていません。
2025年1月現在で、日本は23ヶ国と社会保障協定を締結・発効していますが、
初期の頃から、イギリス、韓国とは、年金加入期間の通算は含まれていませんでした。
最近になって、さらに中国(2019年9月発効)、イタリア(2024年4月発効)との協定には、
期間の通算規定が含まれていませんので、留意すべきです。
3.留学生の所得税免税
問:
日本との租税条約に基づき、
留学生がアルバイトで得た所得について免税とされている国がありますが、
それはどの国でしょうか?
A.中国
B.ベトナム
C.ミャンマー
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答:
A.中国
解説:
留学生は、出入国管理局(入管)から資格外活動許可を得れば、
週28時間まで就労することができます。
その上で、日中租税条約に基づき、中国からの留学生は、アルバイト所得について、
生計・教育等に充てられている限り、所得税を免除されています(第21条)。
GDPで日本を凌ぐ経済大国となった中国からの留学生に対し、
この措置は不公平ではないかという政治的な議論もありますが、
現状免税のままとなっています。
なお、韓国およびフィリピンからの留学生にも免税措置はありますが、
免除される金額および期間に制限があります。
日本が締結している租税条約(155ヶ国・地域)や社会保障協定(23ヶ国)の数は多く、
その全ての内容を把握するのは至難の業ですが、重要な部分は漏らさず理解することが重要です。

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≪2025年3月1日発行 マロニエ通信 Vol.265より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie