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本年は、海外赴任規程に関するご相談の多い年でした。
トレンドとして、ご相談で最も多かったのは、
①最近の円安・現地インフレに対応し、駐在員の処遇をどう見直すべきか?
②駐在員の帯同配偶者が現地で就労したいと希望しているが、認めるべきか?
の2つでした。
①については、基本給部分を上げて、帰国後に下げる訳にはいきませんので、
手当で調整することになります。
具体的金額としていくら上げるのかという点のほか、
現状に合わせて海外赴任規程上の手当金額表を変更するのか、
一時金の扱いとする条文を加えるのかは、会社の判断によります。
②については、海外赴任規程自体が、帯同配偶者が専業主婦であることを想定していることが殆どであり、
これを認めると、ビザ・社会保険・税金を含めて、会社にとっては大きな事務負担となります。
しかし、配偶者のキャリア継続支援の重要性や、
特に中小企業では、本社からの給与・手当だけでは、生活費として十分ではないという配慮から、
消極的ながら認めるというケースが増えています。
また、とても印象的だったことは、
上場してもおかしくないほどの大規模な会社でも、海外赴任規程が旧いままアップデートされておらず、
現実の運用と解離しており、かつ運用の根拠が不明なケースが、まま見られたことです。
実際に、以下のような相談事例がありました。
③現行規程では、海外給与の具体的金額が、職位別一覧として掲載されているが、
実際には、国内勤務時の給与の1.2倍~1.5倍の金額が支払われており、
その金額の計算根拠が不明である。
⇒国内勤務時の手取金額を補償する形で海外基本給を設定し、
物価や環境が異なる地域/国ごとに各種手当を上乗せする形が一般的です。
国内勤務者と海外駐在員との公平さがポイントです。
④現地での子女教育費につき、いくらまで会社が負担するか、根拠が不明である。
⇒現地に日本人学校がある場合は、そちらに通わせてもらい、
入学金・学費等は会社が負担する形が一般的です。
インターナショナルスクールしか選択肢がない場合は、金額が高額になるので、
本人にも一定の負担を求める場合が殆どです。
背景として、国内勤務であれば、公立の小中学校に通わせれば学費等は無料であることとの公平を期す、
という考えがあります。
⑤現地での住宅費・家具費につき、いくらまで会社が負担するか、根拠が不明である。
⇒これも、国内勤務であればかからなかった費用は、会社が負担するという考えが基本になります。
会社が全額負担する会社もかなりありますが、
日本と比して広くグレードの高い住居が用意されることが多いので、
ある程度本人にも負担してもらうケースもあります。
上記のいずれの事例も、国内勤務時と比べた「ノーロス・ノーゲイン」の原則に立ち帰って考えれば、
大きくは外れない地点には辿り着けるものと思われました。
海外赴任というと、人事労務の分野では、応用/特殊分野と思われがちですが、
基本に立ち帰ることの重要性を、改めて感じた次第です。
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≪2024年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.262より≫
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