2024年11月21日 (木)

副業・兼業における労働時間通算ルール見直しへ

複数の企業において、労働基準法が適用される「労働者」として副業・兼業を行う場合は、
それぞれの企業における労働時間を通算し、
法定労働時間を超過した場合は割増賃金を支払う必要があります。

この労働時間通算ルールの見直しが、本年1月より厚生労働省の有識者会議で議論されています。
今回は現行の副業・兼業における労働時間通算の考え方を確認するとともに、
ルール見直しの背景についてまとめていきます。

Point1:現行の労働時間通算の考え方

使用者は以下の手順で、自らの企業における労働時間と、
労働者からの申告などにより把握した副業先での労働時間とを通算します。

STEP1:所定労働時間を労働契約締結の順で通算
STEP2:所定労働時間を実際に所定外労働が行われた順で通算

通算の結果、法定労働時間(1週40時間または1日8時間)を超える場合、
割増賃金の支払いが必要となります。
(例)労働契約締結の順はA→Bとする

STEP1・STEP2の通り並び替えると以下の順となり、
事業場Aの所定外労働3時間のうち1時間と、事業場Bの所定外労働時間2時間が
法定外労働(1日8時間超)に該当します。

特別な労働時間制(変形労働時間制度など)における労働時間通算の考え方については、
厚生労働省の解説資料をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001079959.pdf

Point2:ルール見直しの背景と今後の展望

【Point1】で解説した通り、副業者を雇用する企業は、
自社での労働時間と副業先での労働時間を通算して労働時間を管理する必要があり、
この複雑な通算ルールが重い負担となっているために副業・兼業の許可や
受け入れが難しいとの指摘があります。
柔軟な働き方や多様なキャリア形成の実現に向けて、企業にとって副業・兼業の敬遠要因となっている
現行の細かな労働時間管理を廃止する方針で議論されています。
通算ルール見直しについては、労働基準法の行政解釈を変更するか法改正で対応する見込みであり、
有識者会議の報告書を受けて、今後は労働政策審議会で制度の詳細を詰めていきます。
運用変更は令和8年以降になる可能性があり、今後も制度改正に向けた動きに注目です。


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≪2024年11月1日発行 マロニエ通信 Vol.261より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie