フレックスタイム制の実務と留意点

令和7年10月1日施行の改正育児・介護休業法では、
3歳から小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に対する
柔軟な働き方を実現するための措置として、
「始業時刻等の変更」が選択肢として組み込まれています。
「始業時刻等の変更」の一つとして選択することができる
始業・終業時刻を労働者の決定に委ねるフレックスタイム制が改めて注目されています。

今号では、フレックスタイム制の概要と間違いやすい点を解説します。

フレックスタイム制とは

制度概要
 フレックスタイム制は、3ヶ月以内の一定の期間(清算期間)の総労働時間を定め、
 その範囲内で、各日の始業・終業時刻を労働者が⾃由に決定することのできる制度です。

導入要件
 Step1:就業規則等に、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねることを定める 
 Step2:労使協定を締結し、以下の事項を定める
  ①対象となる労働者の範囲
  ②清算期間
  ③清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
  ④標準となる1日の労働時間
  ⑤コアタイム(※任意)
  ⑥フレキシブルタイム(※任意)

コアタイムとフレキシブルタイム
 コアタイム:労働者が必ず勤務しなければならない時間帯
 フレキシブルタイム:労働者が⾃己の始業・終業の時刻を⾃由に決定することのできる時間帯
 ※どちらも設定は任意ですが、職場規律の維持や健康福祉の観点から設定することが望ましいです。

時間外労働の取扱い
 フレックスタイム制では、労働者が各日の労働時間を⾃ら決定するため、
 1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えて労働しても、
 ただちに時間外労働とはなりません。
 清算期間における実際の労働時間のうち、
 清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間数が時間外労働となります。
 ※清算期間における法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間×(清算期間の暦日数/7日)

清算期間における総労働時間と実際の労働時間との過不足に応じた賃金清算
 清算期間における総労働時間と実際の労働時間との過不⾜に応じて、以下のように賃金清算します。

間違いやすい点(FAQ)

Q1 労働者が必ず勤務しなければならない時間帯であるコアタイムに
   遅刻・早退、あるいは欠勤したら、その時間分の賃金を控除することは可能ですか?

A1 コアタイムに遅刻・早退、あるいは欠勤したからといって、
   その時間分の賃金を控除することはできません。
   フレックスタイム制では、Point1で解説したとおり、
   清算期間における総労働時間と実際の労働時間との過不⾜に応じて賃金を清算するため、
   コアタイムに遅刻等した時間分を他の労働日で補うことで、
   清算期間における実際の労働時間の合計が清算期間における総労働時間を満たす場合は、
   賃金控除の対象となりません。
   一方、コアタイムに遅刻等したことが相まって、
   清算期間における実際の労働時間の合計が清算期間における総労働時間を満たさない場合は、
   不⾜時間分を賃金控除することになります。

Q2 A1のように、コアタイムに遅刻等した時間分を他の労働日で補うことで、
   コアタイムに遅刻等しても賃金控除の対象とならないなら、
   コアタイムが名ばかりの制度になるように思えます。
   コアタイムを厳守させる方法はありませんか?

A2 コアタイムを厳守させる対策として、以下の方法が考えられます。
   ①人事評価への反映
    コアタイムに遅刻・早退、あるいは欠勤した場合、勤怠査定上マイナス評価となるため、
    勤怠査定を賞与や昇降給査定に反映させる。
   ➁懲戒処分
    就業規則等に「正当な理由なくコアタイムに遅刻・早退、あるいは欠勤してはならない」
    など定め、この定めに違反した場合は、制裁規定に基づき懲戒処分の対象とする。

Q3 突発的なシステム障害など、業務上の必要がある場合は、
   フレキシブルタイムの終了時刻後も残業を命じることは可能でしょうか?

A3 使用者の都合で一方的に始業・終業時刻を指示することはできません。
   しかし、労働者の同意を得た場合は、
   フレキシブルタイムの終了時刻後も残業を要請することができます。

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≪2025年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.274より≫
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