2016年08月25日 (木)

「定年のない社会」がやってくる?

先日、みずほフィナンシャルグループが、2018年末までに定年を60歳から65歳に延長すると発表して話題を呼びました。メガバンクの中では初めての試みとなるからです。この日本では当たり前ととらえられている定年制ですが、実は国際的には当たり前ではないのです。

 

弊社では、在日外資系企業の就業規則作成をお手伝いさせていただく機会が多いのですが、その際に外資系ならではの内容も目にします。一番大きな違いは、英語でも作成する場合があることで、専門用語を注意深く翻訳する必要があります。さらに、規定内容自体も特徴的なことがあり、先日に米シカゴを本社とする会社の日本法人の就業規則を作成させていただいた際には、何と定年規定がありませんでした。米国では、年齢差別禁止法(ADEA)に基づき、一定の年齢に達したことを理由に強制的に退職させることは、年齢による差別にあたり違法とされます。そして、本社の人事部門から、日本法人もその方針に従うよう指示が出されたものです。その背景には、米国独特の随意雇用原則(Employment at Will)が存在し、会社側はどんな理由でも従業員を解雇できるという事情があります。また、米国では今でも経済が成長しているので、高齢者の雇用を促進しても若者の就労機会を奪わない、という分析もなされています。

 

どちらの点も日本の現状とは程遠いので、日本の参考にはならないように思われるかも知れません。しかし実は、欧州の多くの国では、解雇に関する規制を残しつつ、定年制を廃止する方向なのです。大雑把に言えば、会社が個別に目的・手段・結果の正当性を証明できる場合にのみ定年制を認めるというのが現状で、定年制導入のハードルが高いものになっています。

 

超高齢化社会を迎え、高齢者の雇用継続が大きな社会的課題となっている我が国でも、定年制自体の正当性が問われる時代がやってくるかも知れません。

 

国際業務推進チーム・ディレクター 米国税理士 成田元男

定年のない社会