2021年03月11日 (木)

テレワーク勤務時の労務管理について

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って急速な広がりを見せたテレワーク。
多くの企業が導入していますが、テレワーク勤務をしている従業員の
労務管理は適切に行われているでしょうか。

本号では、今さら聞けないテレワーク勤務者の労務管理について、
3つの観点に絞って解説いたします。

労働時間の管理

テレワーク勤務者の労働時間は、業務開始時刻と業務終了時刻を
客観的に確認できる方法で管理する必要があります。
一般的な方法は、クラウド勤怠管理システムによる管理です。

業務開始及び業務終了、並びに休憩開始及び休憩終了の時刻に、
従業員がパソコンやスマートフォン上で打刻することで正確な労働時間管理が可能となります。
従業員本人が適切に運用するよう会社が指導することで、客観性の高い管理となります。

その他に、業務開始時及び業務終了時に従業員が上長へメールや電話で連絡する方法が考えられます。
客観的に記録を残すという意味では、電話ではなくメールの方が望ましいでしょう。


なお、自己申告のみでの管理は不適切とされます。
例えば、毎月の勤怠締日に従業員から各日の労働時間を申告させている場合、
パソコンのログ等の情報を確認していなければ客観的な方法での確認とは言えません。
実際の労働時間が申告した時間と大きく乖離していることがあるため、注意が必要です。

また、中抜けした時間については、以下2つの方法で取り扱うこととなります。


テレワーク勤務時の移動時間

使用者の明示または黙示の指揮命令下で行われている移動は、労働時間に該当します。
指揮命令下にあるか否かについては、個別具体的に判断されます。

一般的に労働時間に該当すると考えられるケースは、
例えばテレワーク中に時刻を指定して会社へ出社するよう指示されている場合や
移動中に用務を命じられている場合です。

一方、移動中の時間を自由に利用できる場合や
移動の目的が会社の指示によるものでない場合は労働時間に該当しません。

テレワーク勤務中の負傷は労災に該当するか

勤務中または通勤中の負傷が労災にあたるか否かの判断は、
業務起因性及び業務遂行性の両方が認められるか否かが基準となります。
この考え方はオフィス勤務をする従業員に関する考え方と同様です。

業務起因性とは、業務が原因となったことを指し、
業務と傷病との間に一定の因果関係があることを言います。

一方、業務遂行性とは、労働者が事業主の支配下にあった場合に起きた災害であることを指します。

仕事とプライベートが混在する空間での労災判断については、
過去にも十分な知見がなく、個別判断となることが想定されます。
会社側ができる対策は、事前に想定できる事故について従業員に十分な注意喚起をすることです。

新型コロナウイルスの感染拡大が終息した後もテレワーク勤務を継続する企業は多いと考えられます。
従業員の労務管理を適切に行い、生産性の高い働き方を実現することが重要です。

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2021年3月1日発行 マロニエ通信 Vol.217より≫
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