No Loss, No Gain 2020

様々な要因があるのですが、昨年後半から、海外赴任関係のご相談が急増しています。
どのような手当をつけるのか、子女教育費用はどこまで会社が負担するのか、
為替の変動にはどのように対応するかなど、考慮すべき点は数多くありますが、
まず何より会社が考えるべきは、赴任者の海外基本給をどのように設定すべきかです。

労働法上は、海外赴任者に関する特別な規定はなく、実務上“No Loss, No Gain”の原則が定着しています。
すなわち、「海外赴任前(国内勤務時)と比べて、赴任後の基本給で特別な損も得もしない」という考え方です。
大多数の会社は、この原則に従って海外基本給を決定していますが、
その具体的内容は会社によって異なってきます。

同じ“No Loss, No Gain”といっても大きく分けて、
①日本と比べた現地の物価水準を考慮して変動させる方法と、
②国内勤務時の円貨金額をそのまま利用して海外基本給とする方法、
の2 種類が存在します。

①日本と比べた現地の物価水準を考慮して変動させる方法

購買力補償方式を徹底したもので、大企業を中心として約6 割の企業が採用しています。
赴任地ごとの事情が反映され、理論的なので、赴任者に説明しやすいというメリットがあります。
一方、現地物価水準データを購入するというコストがかる、中小企業に多いアジア地域では
支払水準が下がってしまうことにより、赴任者から不満が出やすい、というデメリットがあります。

② 国内勤務時の円貨金額をそのまま利用し海外基本給とする方法

中小企業を中心に約3 割の企業で用いられていますが、弊社のお客様には多い形態です。
とてもシンプルなので、会社の事務負担は少ないという大きなメリットがあります。
デメリットとしては、①とは逆に、赴任地ごとの事情が反映されにくい点が挙げられます。

弊社では、これまで大手上場企業から中小企業まで、数多くの海外給与について助言させていただいてきました。
その経験に基づけば、①の方式でも、もちろん問題ないのですが、中小企業によくある、
アジア地域に1 ヶ所または多くとも数ヶ所の拠点といった場合であれば、
②の方式も十分採用する理由があると考えられます。

2020 年も、海外赴任にまつわるご相談事例は増加していくものと予想しております。
お役に立てるご助言を提供できるよう、精進して参る所存です。

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2020年1月1日発行 マロニエ通信 Vol.203より≫
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