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12月は賞与や年末調整の季節ですが、外国人社員を雇用している会社にとっては、
退職金の季節とも言えます。
クリスマス休暇を家族と共に本国で過ごしたい、というタイミングでもありますが、
日本の住民税課税制度が独特だからです。
1月1日時点で地方自治体に居住していたか否かで課税関係が決まりますので、
年内に退職して日本を出国し、翌年1月1日にどの自治体でも居住している 事実がなければ、
前年の所得にかかる住民税を支払う義務が合法的になくなります。
これ以外でも、最近になって日本人の海外駐在員の退職金に関するご相談を、
立て続けにいただきました。
海外駐在員が、現地で退職することも珍しくなくなり、切りの良い翌年初めから
新しい会社で働きたいとして、年末に近い時期での退職を願い出ることが多くあります。
この場合、日本から支払われる退職金の課税関係については、特別な留意が必要です。
退職金の課税といえば、支給金額から勤務年数に応じた退職所得控除額を差し引き、
残額の50%のみが課税されるという優遇措置がありますが、これはあくまでも、日本の
居住者に対するものです。
退職日において、日本に居住していない非居住者である場合は、特殊な源泉徴収の対象となります。
それは、退職金支給金額のうち、日本国内で勤務した割合分に対し、20.42%の
非居住者源泉徴収を行うというものです。
例えば、米国駐在中に退職した社員への退職金支給金額が1000万円で、それは日本での勤務20 年間、
米国での勤務5年間に対するものと仮定します。
この場合、会社は、1000万円× 20/(20+5)である800万円の20.42%である1,633,600 円を、
源泉徴収する義務を負います。
そして当該社員は、自分で確定申告することにより、日本の居住者と同じ優遇税制を
適用することができます(選択課税)。
この例でいえば、退職所得控除額が1150万円となり、退職金支給金額を上回りますから、
課税退職所得金額はゼロとなり、源泉徴収された所得税額の全額の還付を受けることができます。
一見、二度手間の税務手続きに見えますが、会社による非居住者源泉徴収は、
所得税法上の義務であり、怠れば追徴時の不納付加算税の対象になりえます。
日本の退職所得税制は、世界でも稀な優遇税制であり、財政厳しき折、見直しの圧力はかかっています。
しかし、あくまで現状の法令遵守を全うすることは、会社の担当部門にとって重要です。
ご不明な点があれば、先ずは弊社にご相談ください。
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2019年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.202より≫
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