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政府が出入国管理法改正案を国会に提出し、
外国人労働者受入れ拡大に向けた、本格的な論議が始まりました。
野党やメディアの注目は、新在留資格「特定技能」に集中し、
実質的な移民政策であるとして、批判の声も大きいものがあります。
これまで限定的にしか認めていなかった外国人労働者の単純労働を、
正面から認めようというものですから、社会に甚大なインパクトを与えることは確かでしょう。
ここで、問題点として指摘できるのは、もう一つの移民政策が、そっと実行されようとしていることです。
それは、留学生が日本の大学を卒業して、年収300万円以上で、
日本語による円滑な意思疎通が必要な業務に就く場合は、「特定活動」の在留資格を与える
というもので、政府はこれも来年4月からの導入を目指しています。
「特定活動」の在留資格は現在でも存在し、
外交官の家事使用人、アマチュア・スポーツ選手、インターンシップなど、幅広い分野で認められています。
そして、今回は、既にある在留資格の範囲を拡大するだけなので、
国会での審議事項となる「法律改正」ではなく、
法務大臣による「告示改正」によることができるとして、議論をすり抜けようとしています。
この新しい「特定活動」は、専門性も大学での専攻との関連性も問われず、
単純労働を認めるものですから、まさにもう一つの移民政策と言えるはずです。
我が国政府は、移民政策とは、
「国民の人口に比して、一定程度のスケールの外国人およびその家族を、
期限を設けることなく受け入れることによって、国家を維持していこうとする政策」と定義づけ、
今回はそれに当たらないとしていますが、他国でこの定義を用いているところはありません。
今回の法改正・告示改正により、日本は本格的な移民社会に移行することを正面から認めた上で、
バランスの取れた新しい社会を構築すべく、
クオータ制(職種別等の人数枠)の導入や分断を生まない地域社会での受容策を、
国会で議論して欲しいと思います。
≪2018年12月1日発行 マロニエ通信 Vol.190より≫
https://www.arcandpartners.com/info/maronie