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何事にも初めてというものがありますが、最近、初めて社員をやや長期(数ヶ月間)の
海外出張に送り出すという案件のご相談を立て続けにいただきました。共通するのは、
給与等の払い方(日本からか、現地法人からか等)に関するご相談から始まったこと、
および海外出張に関する社内規定は何もないということでした。
殆どの会社は国内出張に関する規定は作成されているでしょうが、海外出張に関する規定はない
という会社はまだまだ多いものと思われます。この状態は、社員間の公平な取扱いや社員の
安全確保という労務管理上の点から問題があります。また、給与課税(日当等も給与とみなされて課税される)
という税務上のリスクも負うことになります。一方で、いざ海外出張規定を作成するとなると、
国内出張規定にはない点を考慮する必要があります。
一番大きいのは、航空機のエコノミークラス/ビジネスクラス等の別、宿泊費の上限、
日当の設定でしょう。役職別の表にしている会社が多いですが、さらに出張先地域により細分化
している会社もあります。細かい点では、会社が負担する旅行保険の保障金額も規定しておく必要があります。
実務的には、海外出発日と海外帰着日の宿泊料上限と日当は、国内出張と海外出張の
どちらの規定を用いるのかも、決めておくべきです。
また、日本の会社から海外現地法人の業務のサポートで出張する場合は多いですが、
その費用は日本の会社が負担するのか、現地法人が負担するのか、あるいは折半するのか、
サポートの内容により規定しておくことが本来必要です。これにより、法人税の寄付金課税
(社員の出張費分が日本の会社からの寄付金とみなされて損金性を否認される)のリスクを軽減することができます。
海外赴任規定となると、給与決定の方式や手当の種類、海外社宅の基準、一時帰国に関する規定など、
ずっと複雑になってきますが、先ずは海外出張規定から整備してみてはいかがでしょうか。
国際業務推進チーム・ディレクター 米国税理士 成田元男