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昨年の総選挙以降、所得税の課税要件となる、いわゆる「年収の壁」が注目を集め、
約30年ぶりに見直されることとなりました。
これまでは労働者本人の所得税が発生する要件と、扶養控除の要件がいずれも103万円でしたが
今年度より異なります。
基礎控除だけでなく特定扶養親族などにも改正があり、
ますます複雑化する、所得税の「年収の壁」について解説いたします。

所得税の算出方法
給与所得者の場合、1年間の収入から給与所得控除を引いて所得を算出し、
さらにそこから所得控除を差引いて課税所得額を算出します。
そして、その課税所得額に税率をかけて所得税が求められます。
所得控除のうち高所得者を除き全員に適用されるものが基礎控除となるため、
給与所得控除額と基礎控除額を足した金額以内に収入を抑えれば所得税がかからないことになります。
これが昨年までの103万円の壁となります。

基礎控除と給与所得控除
●基礎控除
基礎控除は高所得者を除き、これまで48万円の控除でしたが、
今年から10万円引き上げられるとともに年収850万円以下の場合にはさらに上乗せされ、
最大95万円の控除を受けられることになりました。
※収入200万円超850万円以下の上乗せは2年間限定の措置で、令和9年以降は58万円となります。

●給与所得控除
給与所得控除はこれまで収入に応じ、55万円から195万円の控除がありましたが
今年から下限額が10万円引き上げられ、65万円から195万円となりました。
そのため労働者本人の所得税は収入160万円までは非課税となります。
扶養控除と特定親族特別控除
●扶養控除
基礎控除額の引き上げに伴い、扶養控除対象者の要件も同じく10万円引き上げられました。
そのため、合計所得金額が58万円以下(収入123万円以下)であれば扶養控除の対象となります。

●特定親族特別控除
特定扶養親族(19歳以上23歳未満の扶養親族)については、新たに特定親族特別控除が新設され
扶養控除の要件よりも多く収入を得ていても引き続き特定親族として控除を受けることができます。
特定親族特別控除では、収入150万円までは、これまで通り63万円の控除を受けることができ、
そこから収入188万円までは段階的に控除額が下がりながらも控除を受けることができます。
これまでは、103万円を超えるといきなり控除を受けられなかったものが、
150万円までは控除を満額受けとれることと、段階的に控除額が減っていき、
いきなり税負担が増加しないことが改正のポイントになります。
また、配偶者については、これまで通り収入201.6万円未満までは
配偶者控除または配偶者特別控除の対象となります。
ただし、扶養する側本人の所得が1000万円以下の場合に限ります。
まとめ
所得税の壁は昨年より大きく引き上げられましたが、制度がより複雑化しております。
年末のパート・アルバイトの働き控えを抑えるためには、
契約更新時などに事前に法改正について説明をおこない
昨年よりも多く働いても所得税がかからないことを伝えておくことも解決策かもしれません。
しかしながら社会保険加入の要件や社会保険上の扶養親族から外されてしまう、
106万円の壁、130万円の壁は引き続き存在しておりますので、こちらへの配慮も意識しておくことが必要です。
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≪2025年6月1日発行 マロニエ通信 Vol.268より≫
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